更年期かも症候群って何?
卵巣機能はあまり低下していないのに更年期と同様、月経異常などの症状が現れるのが「更年期かも症候群」(以下、かも更)。
「月経異常で受診する患者さんの中には、まだ30〜40代前半なのに、もしや更年期ではと心配している人がいる」と、よしかた産婦人科(横浜市港北区)の善方裕美副院長。
このようなかも更の場合、月経不順の原因は、主に2つあるという。
「1つは、まだ本当の更年期ほどではないが、卵巣機能が低下し始めているタイプ。もう1つは、卵巣機能は正常だが、ストレスや疲労、生活習慣の乱れなどによって自律神経の働きがおかしくなっているタイプ」と善方副院長は話す。
◆月経異常
加齢に伴う卵巣機能の低下によって起こる場合と、自律神経の乱れによって起こる場合がある。
◆自律神経失調
ストレスや生活習慣の乱れが続くと、自律神経のバランスが乱れ、心身に多様な症状が現れる。
いずれも、仕事や人間関係などのストレス、ハードワーク、睡眠不足、食事の偏りなど、生活習慣の乱れが引き金になっている。
かも更の原因1・卵巣機能の低下
まずは卵巣機能の低下──。これについては月経の状態からある程度推測できる。最近、月経の状態が変わってきていないだろうか。例えば周期が以前より短くなった、あるいは長くなった、月経がだらだら長く続くようになった、また基礎体温が十分上がらず、高温期がない……。「こんな場合は、排卵が起こっていない可能性が大。卵巣機能が低下し始めたサインと考えられる」(善方副院長)。
下図は、月経周期と基礎体温のパターンを示したもの。あなたはどれに近い?
「更年期かも症候群」でみられる主な月経異常
月経異常かどうかは、月経周期と基礎体温で判断できる。基礎体温は、婦人用体温計で舌下で測定。低温期より0.3℃以上高ければ高温期といえる。(善方副院長の取材を基に作成)
かも更の原因2・自律神経の失調
一方、自律神経に問題がある場合は、脳と卵巣との連携プレーがうまくいかないために月経が乱れる。
卵巣の働きは脳との連携プレー。脳からの指令を受けて、卵巣はエストロゲンなどの女性ホルモンを分泌する。ホルモンの司令塔である脳の視床下部は自律神経の中枢でもあるので、かも更で、自律神経が乱れると月経も不順になりやすく、更年期のような症状も出やすくなる。
「極端なダイエットやストレス、過労などが原因になる。このタイプは30代くらいの比較的若い人にも見られ、卵巣機能自体は正常なことが多い」と善方副院長。
自律神経の働きが乱れると、疲れやすさやめまい、頭痛、冷え、イライラ、落ち込みなどの心身の不調(自律神経失調症状)も起こりやすくなる。これらの症状と月経異常が同時に起こることも珍しくない。
次回は、かも更の治療&セルフケア法をご紹介します。
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 女性健康医学講座 教授

よしかた産婦人科(横浜市港北区)副院長

取材・文/佐田節子 構成/黒住紗織(日経BP総研) 写真/PIXTA