母の晩年が暖かな陽だまりのような日々であってほしい

 父にとっては身体的に介護される側の生活、そこそこ満足してくれていたのか、けっこう不満もあったのか、正直なところ自信はありません。でも、母と私にとっては、そこに父が穏やかに居てくれることで、父に守られているように感じる14年間でした。

 父を介護する間に母も年を重ね、今は父のように介護度でいうと最重度の要介護5となりました。時間を逆行することも、利かなくなった体を戻すこともできないけれど、母の人生の晩秋から冬にかけての季節が少しでも、暖かな陽だまりのような日々であってほしいと願いながら、一緒に暮らしています。

 このような1サンプルでよければ、できる範囲でお話ししてみますね。「介護」と聞くと、確かに大変そうな印象です。しんどくて、つらいイメージもありそうです。そして何より、そのご家族ごとに親との適度な距離も違うことでしょう。

 うちの状態がしんどくない、大変じゃない、なんて逆立ちしても言えませんが、そんな中にも思わず笑っちゃうような瞬間は散りばめられていたりもして。

 誰しも、いつかは家族や親と別れるもの。そして誰しも、いつかは介護し、介護される側の一人となるのかもしれません。そんな日が幸せで温かなものであることを願いつつ、それでは、またご返事しますね。

 ごきげんよう。

(文/渡辺真理 写真/PIXTA)