柴咲 わくわくすることを最優先にしています。一日の中で朝一番に取り組むのは、その時に自分が最もわくわくすること。ただ、集中力は長くは続きませんから、しばらくしたら違うことで気分転換をしてまた戻る、というふうにしています。そんな中で全く別のアポイントがあって人と議論をすると、その議論から自分が抱える課題解決のヒントが見えることも。今のようにドラマ現場に長時間いると、気分転換に「(CEOとしての)仕事したいなぁ」と思うくらい、仕事が好きですね。我ながらマルチタスク派だなと感じます。
若い世代から率先して意見を引き出すようになった
―― 女優、歌手、そして会社経営と活躍の場を広げる柴咲さんは、器用な人だと思われたり、ともすると「強い女性」「クール」と言われたりすることも多いといいます。
柴咲 でも、私自身は全然強くないし、器用でもないし、我ながら不器用だなと思うところもたくさんあります。20代の頃は、人に対して気を使い過ぎて、言いたいことを言えないことも多かったですね。撮影現場などで話し掛けたいと思う相手がいても「あの人は今休憩しているだろうから、話しかけないほうがいい」などと勝手に考え過ぎることもありました。
でも、私は何か目的があると、それに対して突き進んでいけるみたいです。目的や目標があれば、他のことはあまり気にならなくなる。自分が傷つくかも……ということに対しても、持ち前の負けず嫌いを発揮して挑戦することで、強くなれると感じています。
―― 若い頃は、自分を守ろうとして殻に閉じこもっていた時期もあったという柴咲さん。しかし、30代後半となり、現場で「中堅」という立ち位置で扱われるようになってからは、率先して若い世代の俳優やスタッフの意見を引き出すように心掛けています。
柴咲 ドラマだと、ワンクールは最短2カ月です。チームワークができた、と思ったら解散して次の現場になる。限られた時間で、集まったチームで協力しあって物語を創るという共通の課題を背負っているからこそ、頑張れるんですよね。良い作品に出合い、女優として演じてほしい、と求められるのもうれしい。真夜中までの撮影が続いて感情的に「つらいな」と思うことはあっても、根っこには表現ができる喜びを感じています。
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女優・レトロワグラース社長

取材・文/柳本 操 写真/稲垣純也