人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、ARIA読者にお届けします。『やまとなでしこ』、『花子とアン』、『Doctor-X 外科医・大門未知子』など数々のヒット作を手がけてきた脚本家・中園ミホさん。第1回は、脚本家になる前の「自分は何者なのか」と苦悩し続けた日々をお届けします。
(1)脚本家の前は、占いと競馬で生活 ←今回はココ
(2)恋に破れて脚本家を目指す
(3)人生はバタ足。必死に泳いでいく
脚本家

「主人が『ドクターX』を見てるのよ」
2013年の番組オンエア中、50代以上の方にこう声をかけられることがよくありました。私が脚本を手がけたこのドラマは働く女性だけでなく、男性にも支持されていると聞いていました。権力に頼らず、組織にありがちな無駄なことは「いたしません」とつっぱねる、米倉涼子さん演じるフリーランス外科医・大門未知子。彼女の存在が、中間管理職以上の男性にも受け入れられたことはうれしかったですね。
大門未知子のように、私の書くドラマには自分の足でしっかりと立つ女性が多く登場します。が、私自身はというと、まったく逆。苦労したり、自ら逆境に立ち向かうよりもラクして生きたい。小学校の卒業文集に、将来の夢は迷わず「玉のこし」と書くような子でした。
育った環境の影響もあったのだと思います。父は新聞社のカメラマンを辞職した後、芸術家の友人たちを家に招いて夜な夜な酒盛り。母が働いて姉と私を養っていました。家計は苦しく、欲しいものも買ってもらえない。でもお金のある家の友達は、欲しいものはなんでも買ってもらっている。お金ってなんてすてきなんだろう。ラクして、お金に苦労しない生活がしたい──そう思っていたのです。