人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。ヘアメイクアップアーティストの藤原美智子さんは22歳で独立して10年、順調だった仕事にあぐらをかくことなく、一気に会社を設立しました。それは、責任ある人生を送るという意志の表れでもありました。
(1)雑誌記事を見てヘアメイクの道へ
(2)34歳、責任ある人生のため起業 ←今回はココ
(3)いくつになっても変化を恐れない
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⇒妹たちへ 藤原美智子 雑誌記事を見てヘアメイクの道へ
ヘアメイクアップアーティスト、ライフスタイルデザイナー

33歳の誕生日を迎える少し前、私は広告撮影でハワイにいました。
疲れてホテルのベッドに倒れ込んだとき、窓の向こうに見えたのが、マウンテンビューのきらめく夜景。天まで届くような光を見たとき、ふと思いました。「私は自分を輝かせてあげているのだろうか」と。
「そうだ、会社をつくろう」
22歳で独立して10年、仕事は順調でした。雑誌や広告撮影では自分らしい表現ができ、女優の方から指名をいただけるようにもなった。でも、どこかで「このままでいいのだろうか」「自分が望むように生きているのだろうか」という、モヤモヤとした思いを抱えていました。
考えると、「いつかやろう」「そのときが来たら」と考えていることがいくつもありながら、日々に追われて実現できていなかった。「いつかやろう」を、今やらないことの言い訳にしてもいた。でも、自ら一歩を踏み出さない限り、「いつか」はやって来ない。やりたいと思ったときに行動できる人生にしよう──。ハワイの美しい夜景に、そう決意したのでした。実行する人生こそが、私を輝かせてくれるはず、と。
「そうだ、会社をつくろう」。33歳の年末、除夜の鐘を聞きながら決心しました。新しい年に、まだやっていないことに挑戦したい。それは、会社をつくること=責任のある人生を送ること、でした。
それまで、「事務所をつくれば?」と勧められるたびに、「いつかね」と気のない返事をしていました。縛られるのが嫌な私は、家や車をローンで買うことにも、結婚にも興味がなかった。「明日、パリに行こう」と思い立ったらすぐに旅立てるような身軽な生き方をしたいから、会社をつくるのはもっと先の「いつか」にと思っていました。でも、きっと今がそのとき。