人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。多彩なモノマネ芸が人気のタレント、清水ミチコさんの第3回。年齢を重ねるほどに「何とかなるのでは」という楽観性が生まれるという清水さん。自己犠牲ではなく、自らが好きなことでお客さんに喜んでもらう仕事に幸せを感じると言います。
(1)持って生まれた個性は武器
(2)人の縁で「趣味」が仕事に
(3)年を取るほど前向きに今を楽しむ ←今回はココ

よく女性誌に「年をとるっていいことなんです」などと書かれているのを見ると、「またまたまたー、強がっちゃってえ~」と軽んじていた若い頃の私。
しかし、実際年をとってみると、なるほどこういうことか、と今頃になって分かってきます。身体はおよそガタがくるにしろ精神的には楽になり、というか万事に諦めがつきやすくなるんですね。がむしゃらに頑張ったりしなくてもよくなるのです。
誰からもそうそう期待されないので、肩ヒジ張らなくていい。「頑張らなくては」と考えていた時代と比べて、自分を俯瞰(ふかん)して見ることができるので、余裕が生まれてくるというか。
そして、なんといっても到達点を自分で決められる、という自由が見えてきます。若い頃ほど、頂点はみんな同じであり、「あの山のてっぺんだぞ~」「あそこに登るべきなのである!」というのがありました。しかし、年をとると、「いや、それだけではないのでは?」と分かる。「こっちの山のほうがなだらかでいいじゃないか」とか、「あっちの山のほうが、私はおいしい水をたっぷり飲めそうだ」など、全体的に大きく広く眺められ、どのルートで登るのかも自由に決めていい。親がいなくなったりすると、特にそういうものが見えてくるという人もいるかもしれません。
何なら山に登らなくたっていい、下山してみようかな、とまでなってきたりする。デキる他人と自分とを比較しては落ち込んでばかりいた若い頃のしんどさが、かわいそうに思えてくるほどなのでした。

取材を受けていると、インタビュアーの方などから「テレビやラジオでお仕事をしながら、同時進行でコントや歌を作るのは大変じゃありませんか?」と聞かれます。たしかに、ネタが思い浮かばずに悶々(もんもん)とする苦労は若い頃と一緒ではあります。ところがです。今までと違うのは、「なんとかなるんじゃね?」という楽観性が手伝ってくれるということでした。
演芸系は仕事ではあるのだけれども、趣味でもある。その趣味の部分を本質的に大事にしよう、と思うことができたのです。「私は義務でやっているんじゃないぞ、好きでやっているんだ」という気持ちは、若い頃には案外持てなかったことです。どこかに多少の自己犠牲というか、「喜んでくれる人のために少しでも頑張らなければ」という勝手な義務感をちょっと背負ってしまっていたんですよね。