人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。ジャーナリストの江川紹子さんは、自分は社会のことを知らなすぎるのでもっと知るために、と新聞記者を志望。大手新聞社の入社試験に落ちて地方新聞社に入ります。そこで早くから署名記事の機会を与えられ、「自分のやりたいこと探し」を忘れて仕事に没頭していきます。
(1)就活に失敗して地方新聞の記者に ←今回はココ
(2)冤罪事件に全力で取り組んだ30代
(3)オウム事件と裁判傍聴で知ったこと
ジャーナリスト

夢を見つけ、目標を持ち、それに向かって努力して、自分の人生を選び取っていく。そんな生き方に憧れます。私自身は残念ながら、それとは逆に、受け身の、いわば“流される”人生を送ってきてしまいました。ここでは、流されつつ、時に自分なりにあがきもした人生を、反省も込めて振り返ってみようと思います。
なりたい職業がころころ変わった少女時代
子どもの頃から、調べ物は好きなほうでした。テレビ番組で何か分からない言葉があると、夕食の途中でも、意味を調べるために本棚に向かいました。調べ始めると、食卓に戻るのを忘れ、座り込んで百科事典を読みふけることもありました。
その様子を見て、母は私が学者に向いていると思ったようです。母は専業主婦でしたが、娘には自立した人生を送らせたいと思っていて、「あなたは女なんだから、ちゃんと大学に行って、仕事に就かないと」が口癖でした。
私自身は、幼い頃の「エレベーターのお姉さん」やバスの車掌さんへの制服願望が一段落すると、小学校高学年では作家に、中学生になると考古学者に憧れました。トロイアの遺跡を発掘したシュリーマンの伝記を読んで、ギリシャ神話の世界に魅せられたのです。
素敵な担任の言葉に影響されて理数科を志望
なのに、高校受験では理数科に願書を出しました。ハンサムで素敵(すてき)な担任の先生が、「江川は白衣が似合いそうだな」と言ってくれたので、「だったら理数系だ!」と早とちりしてしまったのでした。
さすがに心配になった父が、「進路を決めるのは大学受験のときでいいのではないか」と助言。私も「それもそうだな」と思い直し、普通科に変更して受験しました。
高校時代はクラシック音楽と漫画『ベルサイユのばら』に夢中。古本屋さんで見つけた伝記作家シュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』などを読み、物語の背景を知るのが楽しくて仕方ありませんでした。