人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。『はいからさんが通る』など数多くの作品で知られる漫画家の大和和紀さん。39歳で結婚し、45歳で出産。仕事と子育てに全力投球しながらも「完璧を目指すのは無理」であることを受け入れたといいます。50年を超える画業を支えたのは信頼関係と健康、漫画への変わらぬ思いでした。
(1)描きたいものが描けるまで諦めない
(2)30代で切り開いた自分の強み
(3)画業50年を超えて、変わらぬ情熱 ←今回はココ
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⇒妹たちへ 大和和紀 30代で切り開いた自分の強み
漫画家

私の人生に男性は必要ない。そう考えていたので、36歳─今でいうアラフォーになっても、独り身でいることへの焦りはありませんでした。
その頃に再会したのが、旧知の編集者。お互い新人の頃に出会っていた私たちは、10年ぶりに銀座のバーで会って以降、交際が始まりました。そして、彼の両親に促され、39歳で期せずして結婚することに。
漫画家という職業は、一般には理解されにくい部分があります。締め切り前は家のことが手につかない。何もしていないように見えても、頭の中では物語を考えていて、現実を向いていないこともある。その点、漫画編集者の彼はそういったこともよく分かっている人でしたから、私も自然体でいられました。
45歳で授かった長女、子育てという未知の世界
というわけで、中年同士、のんびり茶飲み友達的夫婦になるかと思いきや……、まさか子育てにオロオロする日々が待っていたなんて!
私自身、子供が特別好きなわけでもなく、年齢的にも妊娠とは縁がないと思っていましたが、実は結婚してから2度、流産を経験していました。婦人科の先生に勧められるまま“妊活”を始めると、それから1年もたたず妊娠、45歳で娘を出産。“超高齢出産”です。本当に、どうにかこうにか出産したという感じでした。
産後半年で仕事を再開しましたが、漫画を描くのは年に8本と決め、仕事量をセーブ。怒濤(どとう)の締め切りに追われる生活からは解放されましたが、子育てという未知の世界に放り込まれ、気持ちの余裕は皆無。私は育児を知りませんし、親元も遠い。約1週間の締め切り作業中はベテランのベビーシッターさんをお願いしました。