人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。自身のコスメブランドを展開し、美の専門家として活躍を続ける君島十和子さん。仕事の中で出会った「運命の人」と結婚、同時にバッシングの嵐を受けます。夫を支え、子育てに専念。あるときかかわった化粧品の商品開発から、「女性の美しさを支える仕事がしたい」と思い始めます。
(1)母の口紅で目覚めた美への憧れ
(2)運命の結婚、逆境が生んだ化粧品 ←今回はココ
(3)美容は「天職」、常に全力で臨む
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⇒妹たちへ 君島十和子 母の口紅で目覚めた美への憧れ
美容家・FTCクリエイティブディレクター

航空会社のキャンペーンガールになった私は、それがタレントや女優の登竜門であったことも知らず、芸能界で働く覚悟のないままデビュー。でも、舞台出演を機に、仕事に没頭するようになりました。とはいっても、「いつか主役に」という野心はなくて。当時は半年先、1年先まで仕事が決まっていること、自分が必要とされる場所があることが喜びでした。結婚への焦りもありませんでした。
28歳のとき、オートクチュールブランド「KIMIJIMA」のブライダルコレクションにモデルとして出演することが決まりました。服飾デザイナーの君島一郎が一代で築き、日本の皇族やパリの社交界にも愛用者が多かったブランドです。ランウェイ経験のない私は緊張していて、一郎の息子で副社長の男性――後の夫の存在を意識する余裕もなし。後から「初対面で無視されて感じ悪かった」と言われたほどです。
皮膚科医から転身し、家業に入った彼は、業界人というよりビジネスマンという印象でした。「女性は年齢を重ねるごとに美しさが変わり、着こなせる服も広がる」。1歳年上の彼の、同世代らしからぬ価値観も新鮮でした。この人なら一緒に年齢を重ねることを楽しめるかも……。共に時間を過ごすうち、そう考えるようになりました。