文化事業が企業の色合いを豊かに変える
僕はお菓子と建物をつくるのが大好きです。建物は造っていく過程で、「椅子どうする?」「この壁どうする?」「反響板どんな形にする?」とあれこれ考えるのが本当に楽しいんです。お菓子作りもそうですが、やるからにはとことん妥協せずにやりたい。それが結果として、長く続くということになると思っています。
六花亭は本業のほかに、コンサートや落語会もやるし、美術館に「サイロ」という児童詩誌もあります。僕は今から24年前に父の跡を継いで六花亭の社長になりましたが、社長になる前から、これからは単なる「物売り」の時代じゃないなというのをずっと感じていました。
会社にとって、お菓子を作って売ることはもちろん必要条件だけれども、十分条件として、「美術館があります」「コンサートもやっています」といったこともあったほうが、企業の色合いがぐっと変わってくる。それは常々経営者として思っています。
コンサートをやることは全然採算に合いませんし、例えば道内の店舗に併設している喫茶室のメニューも、あの値段では赤字です。それでもお客さんが寄ってくれる、人が集まってくれるというのが僕には一番うれしいことなんです。
ふきのとうホールは、六花亭に何かあっても、たぶんみんな壊さずに使ってくれるでしょう。自分の好きなように造るということはもちろんあるけれども、何かをやるときに社会資本という考え方は持っていなければといつも思っています。
続きの記事はこちら
⇒流行は追わず 六花亭が大切にするのは「間口より深さ」
取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/東藤亮佑
六花亭亭主、六花亭食文化研究所所長
