メイクアップアーティストの草分けとして60年以上にわたり美容の仕事の最先端にいる小林照子さん。84歳を迎えた現在もなお、現役のトップアーティスト、美容研究家として活躍し、後進の育成にも注力しています。そんな小林さんにARIA世代の女性が、自分の印象と中身のギャップ、メイクの悩みなどを相談。「なりたい自分」に近づいてキャリア、プライベート共に毎日を生き生きと過ごすための「開運メイク」を教えてもらいます。

BEFORE
・眉は地毛を生かしてメイクなし
・アイメイクはブラウン系が多い
・マスカラでまつ毛が重くなり、毛が寝てしまいがち
河尻和佳子さん(以下、敬称略) はじめまして。メイクはもう20代の頃から全然アップデートできていなくて、今日は先生に教えていただきたいことでいっぱいです!
というのも、課長になって1年くらいたつのですが、外見も役職にふさわしい感じに整えなくてはという意識が強くなってきたんです。服はスーツを着ればそれなりにきちんと見えますけど、メイクはどこをどう変えればいいのかよくわからなくて、結局地味で無難な仕上がりになってしまうんですよね。
小林照子さん(以下、敬称略) 若い頃と同じようなメイクのままでいいのかな、と気づかれたのはとても良いことですね。そうした気づきがないまま年齢を重ねていって、結果的に不自然な若作りメイクになってしまっているケースは少なくないので……。
でも、課長になったから外見もきちんとしなくてはならないと思う必要はないのですよ。だって、すでにしっかり信頼されているから今のポジションを与えられているわけですから。
河尻 わあ、そんなふうに言っていただけるととっても勇気が湧いてきます!
とはいえ、課長になった途端、それまでは名前で呼んでくれていた同僚たちからも「課長」と呼ばれるようになったりして、なんとなく距離を感じるようになったのもまた悩ましいところなんです。
もともと声も大きいうえにはっきりと物事も言いますし、仕事での決断も早いほうなので職場では怖いイメージをもたれているよう。もちろん、仕事で議会に出席したり、講演をしたりするときなどは知的に見られたいのですが、同僚や部下には親しみやすいと思ってもらえるような雰囲気をメイクで出せたらと思っています。
小林 今お話ししている河尻さんに怖い印象は全くないですよ。むしろ、好奇心いっぱいの少年のような愛らしさを感じます。本来のサバサバした性格を生かすような、マニッシュなイメージのメイクをすると、さらに理知的でなおかつ誰からも親しみをもたれるような雰囲気になるはず。
河尻 マニッシュな方向に寄せたほうがいいんですね。確かに、私自身はかわいい感じの洋服が好きなのですが、人からは「パンツスタイルのほうが似合う」と言われることが多かったりします。それだけに女らしさをもっと出すようにしたほうがいいのかなと思っていたのですが、無駄な抵抗はやめたほうがよさそうですね(笑)。
ただ、「怖い」と思われるのだけはどうしても避けたいんですよね……。
小林 仕事中につい険しい顔になってしまうのは誰にでもあること。それは「真剣」ということであって、「怖い」ということではないのです。逆に、仕事に集中しなくてはならないときでもニコニコしていたら不自然ですよね。一番怖いのは笑いながら叱る人だと私は思いますよ。
でも仕事が一段落してほっとしたときには自然と笑顔になるもの。上司がにこやかに「お疲れさま」と声をかければ、職場の空気はたちまち和むものでしょう?
河尻 確かに。真剣な表情とにっこり笑顔をシーンに合わせて使い分けることが大切なんですね。いつでも全方位的に笑顔でいなくてはと考え過ぎていたかもしれません。
小林 そのとおりです。メイクも、オフィシャルなシーンでは同僚や部下に親しみをもってもらえるような雰囲気、議会や講演などのフォーマルなシーンでは信頼感を与える知的な雰囲気に、とそれぞれ使い分けるといいですね。
といっても難しく考える必要はなくて、眉のケアや描き方だけで簡単に雰囲気を変えることができるんですよ。
河尻 眉ですか! もともと眉毛がフサフサしているので、今まで何も手をかけていませんでした。
小林 河尻さんの眉は毛量も形も理想的ですよね。宝物といっても過言ではありません。だからといってそのままにしておくのはもったいないこと。きちんと手をかけて育てると、もっと凛(りん)とした感じが出てくるはずです。そうなれば人に与える信頼感もより安定して揺るがないものになりますよ。
河尻 えっ、眉も育てることができるんですか? すっごく気になります! ぜひぜひ、詳しく教えてください。よろしくお願いします。
