留学は「強烈な孤独を味わう時間」でもあった
「アルバイトで一生を終えるのは不本意やなぁ、とげんなりしました。かといって何の特技も才能もない。それで、米国に留学して箔をつけてこよう! と思ったんです。能天気だから、そんな動機にもならない思いだけで行動できるわけですよ(笑)。幸い、中学・高校と英語教育に熱心な学校に通っていたので、英語の基礎は身に付いていました。大学時代に米国でホームステイした経験もあったので、今度は米国の大学を卒業してみよう、と発想できたわけです」
コネティカット州立大学に留学したのは47歳の時。選択したのは幅広い年齢層に開かれたファインアートという美術系の学部だ。美術系とはいえ数学や英文学などの一般教養もあり、卒業したのは2年3カ月後。猛烈に勉強した時間でもあり、「強烈な孤独を味わう時間」でもあったという。
「真っ黒な穴に落ちたような、強烈な孤独を味わいました。それまで、孤独を感じることなんてなかったんです。ずっと専業主婦として毎日の生活に追われていましたし、常に周りに家族がいましたから。それが留学して学生寮で1人に。かなりつらかったですが、この孤独から逃げてはいけない、目をそらさずに向き合わないと先に進めない気がして、ひたすら自問自答をしました。この先、どんなふうに生きていきたいか。どんなことを大切にしていきたいか。そもそも、どんなことに喜びや悲しさを感じるのか。埋もれていた自分の軸を掘り起こすような作業で、それを乗り切ったおかげで強くなれたと思っています」