明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、渋谷と青山の中間にありながら、静謐な佇まいのミュージアム1999を訪れた。
MADEMOISELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、モデル、ブランド“Growing Pains”のデザイナーとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。また、2018年4月から大学で日本の伝統文化について学んでいる。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深い。http://yulia.tokyo/yulia/
渋谷とは思えない、瀟洒な西洋館
交通量の多い六本木通りを一本入ると、左手に見えてくるチューダー様式の館。大正7(1918)年に着工、昭和9(1934)年に完成、現在はレストランとして営業しているミュージアム1999だ。設計は黒川仁三、施工は竹中工務店が行ったこの建物は、先代が煙草商で財を成した千葉直五郎が、息子の常五郎の結婚祝いに贈った住宅だった。
「父が若い頃よく遊びに来ていたらしく、今でも家族で食事に訪れる、私にとっては馴染みのある場所です。歴史については知らなかったので、どんなストーリーがあるのか楽しみです」(ユリアさん)
建物の中に入ると、2階へと続く螺旋階段が幻想的な世界へと誘う。シャンデリアと自然光が煌めく階段の壁面には、アール・デコの巨匠、エルテの絵画がディスプレイされている。そう、ここミュージアム1999には、絵画をはじめブロンズ像やガラスなど、エルテの作品が200点あまり展示されている「エルテの館」。希少な作品も飾られているので、じっくり堪能したい。