明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、民藝運動の父、柳宗悦が開設した目黒区駒場の日本民藝館を訪ねた。
MADEMOISELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、モデル、ブランド“Growing Pains”のデザイナーとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。また、2018年4月から大学で日本の伝統文化について学んでいる。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深い。
http://yulia.tokyo/yulia/
日本民藝館のなりたちについて語る際に、まずは民藝運動についておさらいしたい。民藝運動とは1926(大正15)年に思想家の柳宗悦、陶芸家の河井寛次郎と濱田庄司たちによって提唱された運動で、生活の中で使われている日常の工芸品の中に、美術品に劣らない美しさを見出した。民衆的工藝を略した「民藝」という新しい美の概念の普及と、民藝運動の本拠地として、柳が同年から構想し、1936(昭和11)年に開設したのが日本民藝館だ。
柳自身が建築家・吉田享二のアドバイスをもとに自ら設計した民藝館は、コの字形平面の建物に、陳列作品の配置や見え方までも構想したつくりとなっている。玄関の戸を開けてすぐの階段は見事なシンメトリーに圧倒されるが、全体的に使用された木材が優しく迎えてくれる。
一般の美術館や博物館と大きく異なる点は、窓。2階に大きく取られた窓からは、たっぷりとした光が注がれる。これは柳が自然光で作品を見てほしいという思いから。自然光=家に近い環境であることを優先した、民藝品を鑑賞するには理想的なアイデアだ。