その「筋力不足」は危険です
自分自身の筋力低下も気になりますが、それ以上にコロナ禍でダメージを受けやすいのが高齢の親世代。「筋肉の量は20代30代がピークですが、減少が加速するのは60代後半から。退職して歩かなくなったり、病気で入院したりすると活動量が減り、一気に筋肉が減少することが分かっています」と立命館大学スポーツ健康科学部教授 藤田聡さんは話します。
筋肉量が減ると、体の動きが悪くなり、体全体の老化につながるという悪循環。今は健康に暮らしていても、コロナ禍で外出が減ったり、趣味の運動を減らしたりすると、日常生活に影響が出るかもしれません。
筋トレすれば長生きしても活動能力が維持できる
親が要介護になることを防ぐにはどうすればいいのか。高齢者の運動指導に詳しい東京都健康長寿医療センター 研究部長の大渕修一さんは「高齢者こそ筋トレが大事です」と指摘します。
「昔は、高齢期は体を休めたほうがいいと思われてきましたが、最近の研究では高齢期こそ筋トレが大切だということが分かってきました。東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)で、65歳~95歳までの高齢者に筋トレをしてもらい、年齢と効果の関係を調べたところ、どんな年齢でも筋力増強効果が確認されています。しかも体の機能が低い人ほど筋トレの効果が高い。つまり伸びしろがあるのです。加齢によって筋力は低下しますが、その分だけ筋トレを行えば、長生きしても筋力が保たれ、活動能力の維持が期待できます」と大渕さんは話します。
筋トレで期待できるのは筋力の維持だけではありません。「さまざまな研究を統合した分析では、体の虚弱に対してだけでなく、認知機能低下に対しても予防効果が最も高いのは運動でした。高齢期に多い抑うつに対しても、軽い運動に予防効果があるというデータがあります」(大渕さん)。
今は元気でも、数年後に要介護が懸念される高齢者は日常生活にサインがあると大渕さんは言います。