うつとの上手な付き合い方
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40~50代は、仕事でもプライベートでも担う役割が重く、ただでさえ心身共に疲れやすいお年ごろ。さらにコロナ禍で働き方が変わったことにより、どのような心の不調が増えているのでしょうか。働く人のメンタルヘルスに詳しい、東邦大学医療センター佐倉病院 産業精神保健 職場復帰支援センター長で精神科医の小山文彦さんに話を聞きました。
役割多いARIA世代 心の不調は誰にでも起こり得る
編集部(以下、略) 働く40~50代の心の健康やうつの問題を考えるときに、特徴みたいなものはあるのでしょうか。
小山文彦さん(以下、小山) ミドル世代が置かれている状況として、職場では担う役割が若い頃より多くなっていますよね。自分ひとりの仕事に突き進んでいられた30代と異なり、組織全体の責任を負うことやチームのかじ取りみたいなことも求められるようになっている。
一方、ライフステージの視点で見たときには、結婚している方には妻や母としての役割もあります。お子さんがいてある程度の年齢になれば、子どもの進学や就職、結婚など、いろんなイベントを迎えます。そして、親の老いのこと。僕自身、40代後半の頃に遠方の実家で母親が骨折。父親はひとりで何もできない男だったので、母が元気になるまでの2年間、父を東京に呼び寄せて世話をしていた時期がありました。
こんなふうに、ミドル世代は自身のことだけでなく、家族に起こるさまざまな変化も含めて、一人で何役もこなさなくてはいけないんですね。しかも1つひとつの中身が濃く、それだけストレスにさらされる度合いも増します。
徒労感や疲労感が増し、抱えきれなくなった荷物を下ろして一休みしたくなる。人生の「思秋期」「階段の踊り場」にさしかかっている中で、心に不調を感じたり、うつ病を発症したりすることは誰にでも起こりうるのです。
―― ライフステージとして、そもそも心身に負荷がかかりやすい世代なのですね。それに加えて、コロナ禍で働き方や暮らし方が変化したことも、新たなストレス要因になっているのではないでしょうか。
小山 テレワーク・在宅勤務をするようになって、職場でのコミュニケーションの取り方が変わったことの影響は大きいと思います。メールやチャットなどテキストによる伝達が圧倒的に多くなり、相手が隣の席や目の前にいれば「あの件はどうなってる?」「こんなふうにやっておきました」で済んでいたことも、見えない場所にいてテキストで伝えようとしたら時間もかかります。進捗管理や打ち合わせの頻度が増したことで時間外労働が増え、その結果睡眠不足でうつに近い心の状態になった50代の管理職女性がいましたが、同じようなケースは昨年の夏ぐらいに結構見られました。
あとは、生活をする場所で仕事をすることのストレスもあります。