うつとの上手な付き合い方
-
1テレワークで負担増の管理職 「うつのサイン」はどこに
-
2家にこもりがちでなりやすい「冬季うつ」 北欧の予防法
-
3「無自覚のストレス」を見逃すな 先進2企業のうつ対策
-
4大宮エリー 「ゴミが出せない」気づいたらうつだった
-
5眠れない、やる気が出ない…それは「更年期うつ」かも
-
6介護うつは「自力で頑張るのは限界」だと知らせるサイン←今回はココ
家族の介護を一生懸命頑張って、気づかないうちにうつになってしまうというケース、少なくないようです。どのように追い詰められていくのか、どう対処すればいいのか、自身も40年以上介護を続けてきたという介護者メンタルケア協会代表の橋中今日子さんに話を聞きました。

日常に追われ、自分に向き合う余裕もなく追い詰められる
編集部(以下、略) 橋中さんは介護者のメンタルケアをされていますが、ご自身もヤングケアラーだったそうですね。
橋中今日子さん(以下、橋中) はい、母が知的障害を持つ弟の療育と親戚とのあつれきで心を病んでしまったんです。中学生の頃には父が進行性のがんを患い、母はうつからアルコール依存症になりました。母が父の看病を頑張り、父の病状が落ち着くと今度は母が調子を崩すという具合で、常に誰かが調子が悪い。私が大学を出る前に父が亡くなり、その後は母と高齢の祖母と弟を1人でサポートしてきました。
2016年に母をみとり、2019年に祖母をみとり、今は弟の生活を手助けしながら一緒に暮らしています。物心ついてからずっと介護を続けてきたというわけです。
―― それは大変ですね! 介護うつも経験されたのですか?
橋中 はい。ただ、介護者の多くがそうだと思いますが、私も病院に行ってうつの診断を受けたり治療を受けたりしなかったので、抑うつ傾向の状態を経験したとしか言いようがないのですが……。介護をしていると日々トラブルが多すぎて、病院に行く余裕がない。自分の状態に向き合う余裕もなく追い詰められていくのです。
最初に「私ダメだ、おかしくなっている」と思ったのは理学療法士として働き始めてから、母が寝たきりで祖母が認知症になり、家事と仕事と介護をやっていた頃でした。介護の負担が重い状況が1年くらい続いた頃、母を怒鳴ることが増えていました。母は要介護5で身体障害者。四肢にまひがある状態で、自分で身の回りのことをするのは無理なのですが、そんな母に「なんでこんなこともできないの」と、私は怒鳴り続けていたんです。
あるとき、皆を寝かせたあとに、気づいたら私は壁に頭をゴンゴンと打ち付けていました。はっと気づいて「ヤバい!」と思いました。
綱渡りのように家事と介護をして職場に行くのですが、遅刻が増えていきます。朝から誰かが熱を出したり祖母が転んだりというトラブルも原因でしたが、私のパフォーマンス自体が下がっていました。結果、「働き方の悪い職員」になっていったんです。ついに上司から「これ以上続くなら皆に迷惑がかかるから辞めてくれ」と言われました。