「働く×介護」両立できますか?
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1年に9万9000人の介護離職者のうち、仕事を辞めたことで「経済面の負担が増した」人は約75%、「肉体面、精神面の負担が増した」人もそれぞれ約57%、約65%(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する労働者調査」)――。自らも母の難病と育児のダブルケアで介護離職を経験した加倉井さおりさん(保健師、ウェルネスライフサポート研究所代表)は「仕事を辞めた後は、経済的にはもちろん身体的、精神的につらかった。介護離職は本当に誰のためにもなりません」という。
別の調査では、介護離職者の約7割が「仕事を続けたかった」と思っている(みずほ情報総研「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究」)。仕事と介護の両立を望んだのにもかかわらず思い通りにならなかったということだ。
専門家は仕事を辞めるべきではないといい、実際に辞めた人は「仕事を続けたかった」と言っているのに、なぜ介護離職をする人が1年に10万人近くもいるのか。両立を難しくしている「盲点」を探るため、多くのケースに接している専門家に聞いた。
介護の始まり「急性期」 混乱の中でたくさんの決め事
「介護は、その始まりから段階を追って進み、次々と対応すべきことが起きる。その中で働き続ける体制を整えることが大事です」(加倉井さん)
介護の段階は、次の4つに分けられる。
【介護初期】 日常をいかに過ごすかを考え、対応する時期。
【病状進行期】 病状の進行に応じて、在宅介護や病院・施設介護の選択。施設介護の場合は入居先探しや入居準備。
【終末期】 延命治療の選択、葬儀、相続、遺品整理など。
介護の始まりは、普段の生活の中で徐々に支援が必要になってくる場合と、突然のケガや病気で自立した生活が難しくなる場合がある。いずれも家族は「混乱」や「(介護という現実の)否定」といった心理状態を抱えながらもさまざまな判断や決定を迫られる。
介護保険のサービスの利用を始めるには、要介護認定を受ける必要がある。7段階の要介護・要支援度の区分に応じて、利用できるサービスや月々の利用限度額が異なる。要介護認定の申請は、本人(介護を必要とする人)の居住地の地域包括支援センターか区市町村の担当部門が窓口。本人や家族が申請するのが難しい場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所で申請代行もできる。
もし、ケガや病気で入院中に要介護認定の申請を出す場合は「入院中の病院の医療ソーシャルワーカーに相談すれば、地域包括支援センターや自治体の窓口に連絡して申請の手続きを進めてくれたり、それらの連絡先や手続き方法を案内してくれます」(N.K.Cナーシング コア コーポレーション代表の神戸貴子さん)。
介護の始まりの段階に潜む両立を阻む盲点は「誰が介護をするのか」と言う判断だ。