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5宇宙飛行士試験ファイナリストの医師が次に進む法律の道←今回はココ
産婦人科医を務めながら2009年にNASA/JAXA宇宙飛行士の選抜試験に挑み、963人の応募者から女性唯一のファイナリストに。2012年には早稲田大学法学部に入学→卒業→出産を経て、現在は同大学院の博士課程に在籍中。その間にはNPO法人も設立……「本当に一人の経歴?」と驚くほど、あらゆる分野に挑戦を続ける江澤佐知子さん。江澤さんが、歩みを止めず、東奔西走する理由とは?
やりたいことを全部書き出してみたら…
編集部(以下、略) 江澤さんのキャリアは、「二刀流」をはるかに超越していますが、自身の中では、どこに軸足があるのでしょうか。
江澤佐知子さん(以下、江澤) 産婦人科医です。産婦人科医を軸に、さらに必要な知識や経験を得るために、そして興味に応じてあらゆることに挑戦してきました。
―― 本業だけでも、かなり多忙ですよね。
江澤 そうですね。私は同じ産婦人科医である父親の姿を見て育ちました。生前の父は忙しい中で、今しかできないことに精いっぱい時間を費やす人でした。例えば、明け方に分娩があって呼び出され、仕事を終えて家に戻ったら、普通は寝たいですよね。でも父は「せっかく起きたのだから」と、ゴルフの練習をしたりしている。好奇心旺盛で「人間、天に召されたらずっと眠ることができるからね」というのが口癖でした。
大学卒業後は、憧れていた父と同じ産婦人科医になったのですが、駆け出しの勤務医の生活は本当にハードで。特に産婦人科医の場合は分娩があり、当直を他の専門の医師に代わってもらうことができません。当直などで長時間勤務したあと、何事もなかったかのように通常の勤務が始まる、文字通り休みのない日々です。
ある日、救急外来から病棟に移動するときに外の明るい太陽の光を見たんです。そこで一筋の涙が頬を伝いました。心と体が限界を迎えているのか、今の状況をつらいと思うのはただのわがままなのかすら、分からないという状況でした。そんな迷いのなかで、先輩がアドバイスをくださいました。「やりたいことを全部書き出してみるといいよ」と。
―― どんなことを書いたのですか?