これからの家族のカタチ
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1家族消滅時代に突入!私たちの家族はどこに向かう?←今回はココ
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2「卒婚」で人生後半の「自分らしい幸せ」を考えてみた
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3同じマンションの別部屋に暮らす「友達近居」が心地いい
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4不妊治療、死産を経て43歳で「養子」という決断
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5「弁護士夫夫」と考える 同性婚、家族と法、家族と愛
「家族はあって当然」ではない?
「家族は、『あるのが当たり前』ではなかった?」――多くの人にこの思いが浮かんだのか、2019年4月に日経ARIAで公開したエッセイスト・酒井順子さんによる「『家族終了』宣言」連載に、大きな注目が集まりました。
そもそも、1980年~2015年の35年間で、家族は大幅に消滅しています。1980年の国勢調査では、世帯の中心は「夫婦と子」からなる核家族で、構成比は42.1%。しかし、2015年には核家族が26.9%まで減少。代わりに増えたのが単身世帯で、構成比は19.8%から34.5%に増加。世帯数は710万世帯から1842万世帯へと約2.3倍になりました(グラフ参照)。加えて、平均寿命が延びたことから、「いつかはみんなが一人になる時代」も到来しています。これからの日本の家族はどうなっていくのでしょうか? 『結婚と家族のこれから~共働き社会の限界~』などの著書があり、「家族主義からの脱却」を提案する立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也さんに、これからの家族の行方について聞きました。
「特別扱い」をするのが家族
―― そもそも、「家族」とはどういう存在なのでしょうか。
筒井淳也さん(以下、敬称略) 「家族は、血縁によって成り立つものではない」というのが私の一つの答えです。代わりに基準となるのは、他の人と扱いが違うかどうか。特別扱いをする人=家族という存在だといえるでしょう。例えば身近な人が突然、交通事故に遭って介護が必要になってしまったとする。そんなときに自分の犠牲を払ってでも「私が面倒を見る」と言えるかどうか。そういう関係にあるかどうかで、「私たちは家族か、家族じゃないか」というイメージを持つのではないでしょうか。
最近増えているシェアハウスで、他人と一緒に暮らす形態が「疑似家族」と呼ばれることもありますが、実は全く家族的ではないんです。例えば4人で住んでいて誰か一人が要介護になってしまったとしたら、恐らく「面倒は見切れない」とシェアハウスから出て行くことになるでしょう。お互い助け合う覚悟がある関係は「家族っぽく」なる。つまり、家族という関係には相当な覚悟があるということです。もちろん、実際にはそれをやらない家族もいますが。
「家族推し」が顕著な日本
―― なるほど……覚悟がある関係ですか。重いですね。もしかしたら、「家族って何?」「家族がなくなる?」などと考えたことがないまま一生を終える人はすごく幸せなのでは? という気がしてきます。
筒井 そうかもしれませんね。でも、そういう幸せな人は減ってきていると思います。あるいは、今は不満がない人でも「この家族が将来どうなるのか」という不安は40~50代のARIA世代ならどこかで抱いている人が多いはず。逆にいえば、「家族が一生続く」と思っている人って本当にたくさんいるの? と思いますけど。子どもがいたとしてもいつかは手が離れるし、配偶者と別れるかもしれないし、死別する確率もある。いつかは「一人の時間がやってくる」というリアリティーはいろいろな人が持っているはず。家族がなくなる確率が高いというのは多くの人が持っている感覚でしょう。
筒井 しかし、今の日本では「家族推し」が非常に顕著です。テレビCMでも「これからは家族の時代」「家族割り」などの言葉を連発している。家族であることを勧めるCMが多いんです。一方、バブル期は、それほど家族を推奨する圧力はなかった。一人でさっそうと、自立して生きる人の像を強く打ち出す時代のイメージもありました。「家族をつくれば幸せだ」という、家族推しが強まっている今の状況は、少しやばいんじゃないか、と思うくらいですよ。いろいろな社会不安が表出して、自信がなくなっていることの裏返しかな、と。そして、これだけ家族推しの社会でも、現実には結婚をする人が減っているわけですが。