部長の壁
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テレビ局の制作部門は、長らく男性社会の色合いが濃かった業界の一つ。そうした中で2021年、民放キー局で女性で初めて編成部長に就いたのが、フジテレビの中村百合子さんだ。直近はグループ会社に出向し、「50代は求められるところで頑張ろう」と思っていたはずが一転、タイムテーブル立案の責任者というとてつもない重責を担うことに。そんな中村さんが直面した一番の「恐怖」とは?
「置かれた場所で咲く」つもりでいたら、まさかの重責が
編集部(以下、略) 中村さんは2017年から通販のディノスを運営するグループ会社に出向していたそうですが、編成部長の話を最初に聞いたときはどう思いましたか。
中村百合子さん(以下、中村) 固まりました。全く想像もしていなかったことなので……。
もともと私は、入社してから番組制作と編成を行ったり来たりで仕事をしてきました。制作現場ではADから始めてその後番組プロデューサーを務め、編成では企画班で新番組を立ち上げたりしました。そうして40代後半になった頃、「役職定年まであと10年、そこに向けて自分はどういうキャリアを重ねていくのがいいのか」と不安になったんですね。制作と編成の経験しかなく、営業でお金を稼いだこともない。それで、「これまでのコンテンツ制作の経験と、ビジネスを掛け合わせた新しいことをやりたい」と会社に伝えたところ、(グループ会社で通販会社の)ディノス出向の内示が出ました。
出向は初めてのことでしたが、制作時代に立ち上げた情報番組『ノンストップ!』の中にテレビ通販としてディノスのコーナーが入っていたので、ディノスの皆さんとは面識があり、全く知らないところに行ったわけではなくて。ディノスではテレビ本部長としてテレビ通販を統括しました。着任した当初の売り上げが年間129億円で、それを3年半で55億円プラスの184億円まで伸ばすことができたんです。同じ志で一緒に戦えるディノスの仲間とも出会えて、充実した時間を過ごしていました。
―― 特に本社に戻りたい意向があったわけでもないのですね。
中村 戻る希望は一度も出していません。自分は「置かれた場所で咲きなさい」の年次と思っているんです。これまで会社でいろんなことをやらせてもらってきて、50代でなお必要とされる場所があるならそこでポジティブに頑張ろうと思っていました。
だから、フジテレビに戻って編成部長をと言われたのは青天のへきれきでしたし、不安も押し寄せてきました。出向で約4年間、テレビのど真ん中の仕事から離れていましたし、編成にいたときに部長がどれほど忙しいかも見ていましたから。
編成部長の最大の仕事は「何時にどの番組を放送するか」というタイムテーブルの立案であり、その責任者です。どの番組を終了して、何を新しく始めるかをすべて決めていく。その過程では、編成部員と共に、番組の視聴率や世の中の反応、営業収入、周辺ビジネスの売り上げなどを総合的に検討し、番組編成に関する責任を負う立場となります。
―― 重責を引き受けるに当たって、どう気持ちを切り替えていったのでしょうか。