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文系社員の多い総合商社でも、人口知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用した戦略へのニーズは高まり、デジタルに特化した部署を設置する組織改革や、リスキリングも含めた人材育成を積極的に進めている。ただ、一般的なデジタル研修を受けたからといって、すぐに現場にマッチしたスキルが身に付くとは限らない。実践型プログラムにこだわった丸紅「デジタルチャレンジ」の取り組みを取材した。
デジタルを活用できる人材育成が急務
「商社は営業力が基本ですが、従来の業界の知識だけがあればいいわけではなく、新しいビジネスに対応した戦略を立てるにはデジタルのスキルセットと思考形式が必要です」と丸紅デジタル・イノベーション室副室長の大倉耕之介さん。
デジタル人材の育成を担う同室は、営業部門に対してデジタル技術活用のサポートも行っている。「営業からのニーズもここ数年で急増しています。丸紅のビジネスパーソンに足りないデジタルスキルと顧客志向のデザイン思考を強化していきたい。23年度までにデジタル人材を200人程度にすると打ち出していますが、個人的にはそれでも足りないと思っています」(大倉さん)
同社では、17年度からDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIに関する研修を年10回程度行い、これまでのべ4000人程度が受講してきた。「研修は一通り浸透しましたが、座学だけでは足りないという問題意識はありました。19年度には自分で手を動かしてプログラミングする研修も行いましたが、仕事ですぐそのプログラミングが使えるわけではない。それよりはもっと現実に使えるテーマにしようと考えました」(大倉さん)
「デジタルで解ける課題」を社内から公募
そこで、20年度から開始したのが実践型プログラム「デジタルチャレンジ」、通称デジチャレだ。より丸紅の実務にフィットした内容にこだわり、事前に社内から「デジタルで解ける課題」を広く募った。
その結果、初年度に設定したのは次の3テーマ。1つは過去のデータを分析した需要予測、2つ目はアルゴリズムを使った輸送計画の最適化。車や船の台数、経由地、拠点などが変数になる。3つ目はデータの収集と可視化。どれも商社業務に頻出する課題だ。
「デジタル人材育成といっても、外部で作成した研修を社員に受けさせるケースも多いと思いますが、我々はもう2、3歩踏み込んでいます。世の中に出回っているサンプル的なデータを使うのではなく、社内にあるデータを使い、テーマとともに事務局でセットしました」(同室データアナリティクス課マネージャー芦川裕也さん)。参加者は3つのテーマから興味あるものを選び、実際にプログラミングコードを書いて提出する。