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2021年春、ARIA世代のこれからの働き方に影響を及ぼす「2つの案件」が静かに始動した。1つ目は、大企業から地域の中堅・中小企業への人材の流れを創出する「スガ案件」とも称される政策。もう1つは、4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されたこと。企業に、70歳までの就業機会を確保する努⼒義務が課せられることになった。
「1万人」が首都圏から地方へ転職する?
最初に霞が関で「スガ案件」と呼ばれる政策を見てみよう。主体となるのは、官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)。まずは大手金融機関など、大企業の協力で転職人材リストを制作。地方銀行などの仲介により、人材不足に悩む地域の中小企業へ人材をマッチングし、派遣する仕組みだ。菅義偉首相は、「早期に1万人規模の人材をリストアップする」と3月に表明した。
「メガバンクが協力し、これまでに100人程度の人材リストが提出されたと聞いています。ですが、はっきり言って、今さら国がやる事業ですか、と思いました。2016年に既に大都市圏、大企業の優秀な人材を地方の中小企業に橋渡しする内閣府の『プロ人材事業』がスタートして45道府県に『プロフェッショナル人材戦略拠点』が設けられ、約1万1000件が成約(20年までの実績)しているのです。さらには、民間企業のデータベースにも数十万人規模の人材が登録されています。民業圧迫にもなりますし、民間を活用したほうが実効性が高いのではないでしょうか」(日本総研調査部・星貴子さん)
菅首相は首相になる前から、地銀の再編に積極的だ。「今後、地銀が融資などの銀行業務だけでは尻すぼみになるのが目に見えています。金融庁が2018年に銀行の業務範囲規制を緩和したことで、地方銀行や信用金庫が人材紹介業に本格的に参入しました」(星さん)。地域経済を支えているのは、地銀を通じての取引先。金融庁の強い旗振りのもと、これからは地銀が金だけでなく、人も動かす。そうでもしないとこの先、地方の中小企業も厳しいという課題も根底にはあるのだろう。
さらに、金融庁がこのプロジェクトを推進している背景には、メガバンクの余剰人材がある。「支店の統廃合や行員の削減に取り組むメガバンクにとって、抱え過ぎた行員をどうするかは大きな課題。人材不足にあえぐ地方の中小企業が、その受け入れ先と考えられたのでしょう」(地方転職に詳しい業界関係者)
さらに「仕組みにも問題がある」と星さんは指摘する。