社会を変える一歩を踏み出す
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法律や社会のルールを変えようと声を上げる人たちがいる一方で、彼らのアクションを広く社会に届けるために安定した支援を行っていこうと2021年3月に発足した団体があります。「一般社団法人社会調査支援機構チキラボ」。立ち上げたのは、いじめやハラスメントなどの社会問題に関する調査を数多く手掛けてきた評論家の荻上チキさんと、社会課題解決のPRを専門とする若林直子さんです。団体設立の経緯や、社会活動において調査とPRが果たす役割について、荻上さんに聞きました。
評論家

調査データには、法案審議を後押しする強い力がある
編集部(以下、略) 「チキラボ」は、世の中の仕組みを変えていく活動を「調査」と「PR」で後押しする団体とのことですが、なぜこの2つによる支援が必要なのでしょうか。
荻上チキさん(以下、荻上) 例えば、今ある理不尽を減らすために法律を作る・変える場合、実際に法律を変える重要なプレーヤーとなるのは国会議員です。彼らは国会でさまざまな質問に立ち、自ら法案を提出し、閣法(内閣が提出する法案)に対して質問を重ねます。適切な質問をしたり、データをぶつけたりということをしなくてはいけないわけですね。
そのときに、単に熱い思いだけで「こんな法律が必要です」と言っても、議論になりません。どれくらいの当事者がいるのか。どういう法律によって、どんな効果が見込めるのか。こうした議論を進めていく上で、調査データは強力な立法事実(その法律の必要性の根拠となる社会的事実)になります。
国会議員は支持者や有権者の思いを託されて動く存在です。ですから、有権者や当事者の陳情や、票田ともなりうる世論の盛り上がりが意識されれば、それを受けて、「こういう法律を作ることでお応えします」と解決策の提示に向けて動いていくのです。
世論の盛り上がりを作るにはどうするか。当事者や問題に気づいた人が「私の経験を聞いてください」と声を上げることに加えて、「こういったデータがあります」「これだけの潜在的な当事者がいます」などの訴えを通じて、メディア上での議題設定を行うことが必要になります。つまり、問題提起の裏付けとなる「調査」と、調査結果を多くの人に知ってもらうための「PR」が必要なのです。
調査にもPRにもさまざまな「手札」があって、今回はどんな調査手法が有効か、どのメディアやインフルエンサーに働きかけると効果的かといった判断が重要になります。そうした点で、僕には調査の、若林直子さんにはPRの「土地勘」がある。チキラボではそれぞれの強みを生かし、お互いに信頼して任せていく感じです。
―― 荻上さんはチキラボ設立以前から、個人的にさまざまな社会活動のプロジェクトに参加してきたんですよね。