はじめての社外取締役
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6月は多くの企業で株主総会が行われ、新たに女性の社外取締役が誕生した企業もあります。これまでは男性だけがメンバーだった組織に、初めて女性が入ることで何が起きるのか。何を期待されているのか。また、何をすべきなのか。コーポレートガバナンスに詳しい研究者であり、自身も複数の大企業で社外取締役を経験している成蹊学園学園長の江川雅子さんに聞きました。
新卒社員から上り詰めて役員へ、世界的には珍しいキャリア
編集部(以下、略) 日経BPでも上場企業の女性取締役のデータを独自にまとめているのですが、それを見ると、2015年以降に女性の社外取締役がぐっと増えているようです。
江川雅子さん(以下、江川) 私自身も、15年前後に声を掛けられて複数の企業で社外取締役になりました。東京大学の理事を15年まで務めていたので、その間は社外取締役を兼任できなかったという事情もありますが、やはりコーポレートガバナンス・コードの影響は大きかったと思います。すべて女性としては1人目の社外取締役でした。
コーポレートガバナンス・コードが日本でできたのは2015年。その後18年、21年と、3年ごとにコーポレートガバナンス・コードは改訂されましたが、多様性というキーワードは最初から入っていました。女性とか、外国人という言葉もあったので、女性の社外取締役が増え始めました。ただ、当初は社外取締役の導入自体が新しい取り組みなので、まずは2人入れなきゃという対応でした。21年の改訂で、それまでは社外取締役2人だったのが、プライム市場上場企業は取締役会の3分の1以上求められるようになりました。人材の多様性もさらに強くうたっています。
人材の多様性に関しては、社外の役員だけではなく、社内の中核人材に対しても求めています。日本の会社は新卒を採用してその人が昇進して役員になるケースが多いので、大企業などでは、その企業での経験しかない役員がほとんどです。これは世界的に見ると珍しいのです。転職などで多様な経験を持つ人が入ってきたほうが意思決定の質が高まるということで、中核人材の多様性を高めなさい、そのためには中途採用などをしっかりやるべきだ、という内容が入っています。
コーポレートガバナンス・コードは、それを守らないとペナルティーがある法律のようなものではなくて、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を守るか、そうでなければその理由を説明する)という枠組みです。でも、コーポレートガバナンス・コードで2人の社外取締役を求められたのが、企業にとってはかなり大きな圧力になりました。
―― 江川さんの以前の研究では、社外取締役に女性を入れると、性別の面での多様性が増えるだけではなく、それまでのバックグラウンドとして大学院を修了している、留学経験がある、外資系の企業や国際機関での勤務経験がある、といったいろんな多様性を一緒に確保できる、という指摘があり、印象的でした。