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「年齢で『もうそろそろ仕事はいいかな』と思ったことはないです。いつも頭にあるのは、次は何ができるかな?ということですね」。そう笑って話すのは、キャリアコンサルタントの二見忍さん。75歳の今も週4日、東京都内の区役所で非常勤職員としてフルタイムの仕事をしています。結婚したら専業主婦が当たり前の時代、仕事を辞めざるを得ない節目は何度もありましたが、働くことへの意欲が途切れることはなかったそう。その仕事人生が充実期を迎えたのは、60歳を過ぎてからでした。
働く意欲を失っている生活保護受給者の就労を支援
既に仕事をリタイアしている夫と会社員の息子と暮らす二見さんが、出勤のために横浜市の自宅を出るのは毎朝6時50分。「電車の乗り換えが3回あるんですよ。帰りはさすがに座りたくなりますけど、朝は体力づくりのためにあえて立っています。揺れにどこまで耐えられるか確かめよう、なんて思ったりして」。何ともタフな日常をどこか面白そうに話す口調に、無理して頑張っている様子は全く感じられません。
二見さんは区役所で、生活保護の受給者を対象に就労支援を行う相談員をしています。「働く意欲がある人はハローワークで応募してもらえばいいのですが、少しだけ背中を押してあげる必要がある人たちを、ケースワーカーさんから私たち相談員が引き受けて対応します。履歴書の書き方を指導したり、模擬面接をやったり。何よりまず、働く意欲を失っている人にどう前を向いてもらうかが一番大変なところですね」
一人に対する支援プログラムは基本的に半年間。「就職までこぎつけられれば一番ですが、そこまでいかなくても、相談者が自分で考えて行動できるようになったときには本当によかったと思います」と二見さん。支援が終わった後も「二見さんに話を聞いてほしい」と以前担当した人が区役所に電話をかけてくることもあるのだとか。こうした信頼を寄せられるのも、「思うようにはいかない出来事に向き合ってきたことが、全部今に生きている」と振り返れる、豊かな人生経験があるからこそ。自身の社会人生活も、挫折からのスタートでした。