自分が、家族が、部下が… がんと共に働く
管理職、専門職として働く人も多いARIA世代。責任の重い業務を担う人ががんになったとき、治療と仕事の折り合いをどのように付けていったのか。40代でがんを経験した2人のエピソードから、治療と仕事の両立への向き合い方を探った。
「部長職を続けられないかも」不安を覆した上司の対応
日立製作所システム&サービスビジネス統括本部 アプリケーションサービス事業部の事業企画部長を務める太田純子(よしこ)さん(52歳)は2016年6月、左胸に違和感があり総合病院で受診。左乳房の乳がん(ステージ1)と診断された。
太田さんが率いる事業企画部は、企業向けのシステム開発部門であるアプリケーションサービス事業部全体の事業計画の策定や管理、海外グループ企業との連携強化といった重点施策の推進などを担う。さらに、事業部が開発するIT技術者向けのソフトウエア・ツール群や顧客業務向けサービス群の広報も担っている。人数は10人前後と少ないが、少数精鋭でないと難しい業務でもある。
第1回の手術では、左乳房の部分切除とリンパ節への転移を調べるための術中診断を行った。転移はなかったものの、術後の病理検査で別のがん細胞が見つかったため、10月に第2回の手術を行い、術後に抗がん剤治療を行うことになった。
太田さんは最初の手術をすることになったとき、すぐに上司である事業部長に報告をした。必要な入院期間がそれほど長くなく、退院後は1週間以内に復帰できそうと主治医にも確認していたので「比較的安心して受け止めていました」。ところが、追加手術と抗がん剤治療が必要ということになり、太田さんは精神的に大きく落ち込んだ。