自分が、家族が、部下が… がんと共に働く
企業において進む働き方改革、そして新型コロナウイルスがもたらした変化。働くがん経験者はどのような問題に直面しているのだろうか。がん経験者の就労支援や企業へのコンサルティングを手掛けるキャンサー・ソリューションズ社長で自らもがん経験者である桜井なおみさんに、コロナで変わるがんと就労の最新事情を聞いた。
「がん離職」の山は2つある
「がんと分かった時点であきらめて退職を選ぶ早期離職だけでなく、離職の山は他にもあるんです」(キャンサー・ソリューションズ社長の桜井なおみさん)
2019年、同社が厚生労働省の労災疾病臨床研究事業として実施した調査によると、がん経験者の「心と体の変化曲線」は、がんが分かった時点に大きく下がるだけでなく、入院などを終えて復職した時点でも落ち込むことが分かったそうだ。つまり復職時が離職の第2の山になるという。
「復職はしたが治療との両立でつらい、以前のようなパフォーマンスが出せないなどの理由ですね。無理をして頑張って燃え尽きのようになってしまう人もいます」
がんに限らず、入院治療は年々短期化する傾向にある。その分、外来に通院して治療する期間が長くなっているが、「退院して外来になると孤独感を覚える患者さんも多いんです」。ちょうどこの時期が復職と重なることも多く、復職後の離職を防ぐためのサポートが求められているという。
働き方改革で多様なワークスタイルが根付いてきたことは、がん治療との両立にとってはプラスになる。特にコロナ禍で広がったテレワークによって、治療を続けながら働く上での自由度は高まった。だが一方では新たな課題も生じているという。