40歳からの成功する転職
40代女性にも転職がしやすくなっている背景には、日本の大企業が直面している、労働市場全体の大転換があった――。大企業など170社もの人事制度に関わってきた組織・人事コンサルタントの秋山輝之さんから、日経ARIA読者に向けて話してもらった講演会では、普段、転職活動をして転職エージェントと関わっているだけでは知り得ない大局的な話をうかがえました。9月20日の講演会に参加できなかった読者のために、講演記録を2回に分けて全文公開します。
私はベクトルという会社で人事コンサルタントをしています、秋山輝之と申します。本来あまり表に出ない裏方の仕事ですが、前回、早期退職について話した記事『「黒字企業で評価A」のあなたも早期退職の対象になる訳』が大反響だったとのことで、今回40代からの転職というテーマでお話しすることとなり、ここに立っております。
私は1973年生まれの就職氷河期世代で、東大を出てダイエーに入るという、就活を真面目にやらなかったのが丸分かりな経歴です(会場笑)。2年ほど店舗販売をした後人事に配属され、その頃から急に業績が悪化し始めました。1996年ごろには3万人くらいいた従業員も、私が退職するときは5000人。6分の1にまで落ち込みました。一番大きかった要因は、ローソンの売却や数千名単位の希望退職者の募集ですね。そんな中私は、新規計画や、それこそリストラをやっていました。
その後2004年からベクトルで人事制度を組む仕事を始めました。これは自慢になってしまいますが、私が決めた人事制度で、日本の約170社、30万人のお給料が決まっています。日本の正社員の1%くらいのお給料に、私が関わっているということですね。
人事制度を作っている人間が制度を利用する側に話す機会は、実はあまりないんです。例えば皆さんが保険会社を選ぶとき、保険制度を作っている人ではなく、営業の方から話を聞きますよね。転職でも、普通は人材紹介のカウンセラーに相談する。だからこそ、今日私はここに呼んでもらったのだと思います。今日はよろしくお願いします。
今回のテーマ、40代からの転職について、読者の方の関心の高さにARIA編集部の皆さんがとても驚いたそうなのですが、参加者の皆さんの中で、転職経験がある人はどのくらいいらっしゃいますか? (会場では、過半数の手が挙がる)。
今日ここに来られたということは、あまり良い転職経験をお持ちではないのかな、なんて想像してしまいますが(会場笑)。
「2大情報格差」の1つが採用。自信を持つには?
そもそも、転職が好きな方ってあまりいないと思います。私自身、今転職しなきゃいけないと言われたらゾッとします。何が怖いかって、転職市場が分からない。自分に合う求職が活発な時期かどうか? 何を聞かれてどう答えればいいか? 平常心で受け答えできるか? 仮に入社できたら、どんな仕事をするのか? 人間関係は? など、分からないことだらけです。
「2大情報格差」という言葉があります。1つはマイホーム。こっちは初めて家を建てるけど、向こうは毎日建てているわけですよ。この家3000万円ですって言われて、それが妥当かどうかも分からない。
そして、もう1つが、採用です。1人が受ける採用面接は、例外を除いて多くても5~6回。金融系だと15~20回する人もいますけれど。一方の人事側は毎日やっているわけですから、面接を受ける人の不安をよそに、「なんとかこの人の真を暴いてやろう」と思っているわけです(会場笑)。
そのため、「自信を持って面接を迎えられる人とそうでない人」というのが、転職の成否を分ける大きなポイントになります。

優秀な人がつまらない転職をしてしまう訳
私は超大手企業からベンチャーまでいろいろな採用の現場を見てきました。人材業界はすごく20代を重視しますが、実際に動いているのは30代、40代が中心です。経験豊富でいらっしゃるが故に、「この人、もっとこういうふうに自分を説明したらいいのに」「なんでこんな優秀な人がつまらない転職しちゃうんだろう」と思うことが多々あります。今日はその点をお話ししたいと思っています。
求人、転職先がどれだけあるかとキャリアカウンセラーに聞くと、いくらでもありますって言いますよね。実際はどうなのか説明します。もう1つは、求められるスキルにどのようなものがあるか。面接がうまい人の共通点はどこかをお話しします。
まず、転職先は、ずばりあります。10年前の45~54歳の女性転職数は年間25万人でしたが、最新のデータで2018年は36万人。約1.4倍に増えています。36万人という数字は大卒の新卒数と同じくらいになります。その前年の2017年は31万人でしたので、5万人も増えています。