あの人が通ったワケ 社会人こそ大学院で学ぼう
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女優・酒井美紀さんは2019年、大手事務所から独立し、ずっとボランティアで活動してきた国際協力を学ぶため大学院に進学。21年には不二家の社外取締役に就任し、世間を驚かせました。「大学院で学ぶことで世界が広がりました。応用演劇を使って雇用を生み出す仕組みをつくりたい、国際協力の現場でも活用したい」と話す酒井さんに学びの原動力とそこで得たものについて聞きました。
10年以上続けるNGO活動が学びのきっかけ
編集部(以下、略) 酒井さんは15歳でデビュー以来、女優を続けてきました。30代に入って結婚・出産で仕事をセーブした時期もありましたが、芸能活動をしながら大学院で国際協力を学ぼうと思ったのはなぜですか?
酒井美紀さん(以下、酒井) 大学院に行きたいと考え始めたのは20代の頃。2007年から国際NGO・特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使になり、貧困や紛争、災害など困難な状況の中で生きる子どもたちと接する中で、なぜ支援が必要な状況が生まれるのか、その背景について専門的に学びたいと考えるようになりました。ただ、そのときは仕事や私生活などの環境が整わず、一度は諦めたんです。今、通っているのはそのときリサーチした大学院です。
―― NGO活動は14年以上、続けているんですね。大学院は「国際協力と演劇」をテーマにしていますが、なぜそのテーマを選んだのですか?
酒井 NGOで活動する中で、学術的な基礎知識が乏しいと実感しました。途上国などを訪れているうちに、疑問や葛藤が増えて、自分の中での問題意識が明確になっていったんです。どうしたら解決の方向に向かっていけるのか、研究したいと思うようになりました。
そのころ、たまたま仕事で行ったバングラデシュで、NGOの方が演劇を使って子どもたちにいろいろなことを教えていました。識字率の低い地域では演劇的手法がすごく役に立つ。それを見て、演劇的な手法を使って何ができるかを研究するというテーマが見えてきました。これなら自分の蓄積してきた経験が生かせるなと思って。
―― なるほど。そうやって学びたいテーマが具体的になっていったんですね。
酒井 もう一つのきっかけは、息子が通う小学校から演劇を教えてほしいと言われたことでした。生徒を体育館に集めて、講習に2時間もらったのですが、いざやってみると、どう教えていいか分からなかった。それで調べているとき、エンターテインメントではない「応用演劇」という手法があることを知りました。調べていくうち、どんどん学びたくなって。