あの人が通ったワケ 社会人こそ大学院で学ぼう
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30代後半に会社を辞めて大学院で学び直しを選択
アラフォーで海外の2つのビジネススクールを終了したバンダイナムコネクサス取締役の西優美子さん。セガ米国子会社に勤務した後、フランスの大学院でMBAを取得。その後日本で働きながらオンライン授業でハーバード大学の最新プログラムを受講し、2021年1月、日本第1号の卒業生になりました。時間も体力も制約がある中で、難しい課題に挑戦し続ける西さんに、仕事と学びの両立の工夫と大学院で得たものを聞きました。
編集部(以下、略) 30代後半でキャリアを中断してフランスのEDHEC(エデック経営大学院)へ行ったのはどういう思いからですか?
西優美子さん(以下、西) もともと大学ではデジタルアートを学び、ビジネスや経営に最初から興味があったわけではないのですが、20代でマネジメント職に就くにつれ、経済やファイナンス知識の必要性を感じていました。30代になってセガ米国子会社で担当した戦略プロジェクトが一段落したところで、学び直しをしたいと本格的に考えるようになりました。
それまでの仕事で成功したという実感はあったのですが、振り返ってみて本当に正しかったのか、もっと良いやり方があったのではないか、といった“答え合わせ”をしたくなったのです。
在学中の体調不良で婦人科系の病気が発覚
―― EDHECはヨーロッパで随一のビジネススクールですが、日本人で進学する人は少ないですよね。なぜEDHECを選んだのですか?
西 私の場合、MBAを取るには30代後半で遅いほうでしたので、典型的なMBAではなく、自分なりの目的意識を持って学校を選びたいと思いました。その点、EDHECのMBAには昔からサステナビリティープログラムが組み込まれており、「社会を良くしていくビジネスとは何だろう」という課題に向き合っていましたし、アフリカに行く視察研修も含まれていた。
それまで先進国の富裕層の競争社会で切磋琢磨してきた自分からは一番遠い領域だったし、40代からの働き方、生き方を考えてそこに足を踏み入れたくなったんです。今では広く使われるようになったSDGsを少し先取りできた感じです。
―― 大学院に通ってどのような気づきがありましたか?
西 フランスでの暮らしはとても充実していましたが、在学中に体調を悪くしてしまったんです。授業中に発作的に目が見えにくくなって、現地の救急にかかったこともありました。なんとか修了はできたのですが、心配なので働き始める前に日本でさまざまな検査をしたら、婦人科系の病気にかかっていることが分かりました。20代30代を駆け抜けてきて、40代を目前に、一回立ち止まろうという体のシグナルだったんですね。その後、1年ぐらい治療に専念することになり、闘病中は今後を考え直す機会になりました。