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曽祖母が1925年に設立した学校をルーツとする中高一貫校・品川女子学院の6代目校長を務め、2017年からは理事長に就任した漆紫穂子さん。翌18年には早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学し、19年に修士課程を修了しています。90年代には経営危機にあった同校の改革に参加し、入学希望者数を30倍に、偏差値を20ポイント以上アップさせるという目覚ましい成果を残してきた漆さんが60歳を目前にして大学院に進んだのは、なぜでしょうか。そしてそこで得たものとは。詳しく話を聞きました。
「体験談」がベースの話に説得力はない
編集部(以下、略) 教育者、経営者のキャリアを順調に積んでいた漆さんが、50代後半で早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学したきっかけは何ですか。
漆紫穂子さん(以下、漆) 私は、品川女子学院の校長・理事長として教育現場に身を置く一方で、教育再生実行会議委員等を務め、教育政策会議にも関わってきたのですが、教育政策をつくる上で、エビデンスに基づいて考えるというプロセスが不足しているなと感じたのが、大学院進学を決めたきっかけです。
漆 教育って、誰もが経験したことがあるからこそ、議論が「個人の体験談ベース」になりがちなんです。「うちの孫の場合……」や「私が通っていた頃は……」というN=1の主観的な発言をよく耳にします。私の場合、学校現場にいるので、そうした発言に現状との乖離(かいり)を感じていました。
でも、その私が、毎年200人を30年間見てきたという経験をベースに語ったとしても、主観であることには変わりないと気づいたんです。私立の中高一貫校の女子校という限定された場所での個人の見方ですから。そこで、定量的な根拠をベースに発言できるようになろうと考えました。