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年老いた親の世話は子どもの役割と世間は言う。でも、自分を苦しめ続けてきた「毒親」でも、介護しなければならないの? そんな疑問を、数々の介護のケースを収録した書籍『毒親介護』(文春新書)の著者、石川結貴さんにぶつけてみると「その答えは簡単には出せません」という。毒親介護の難しさ、心の問題について話を聞いた。
本当に苦しいのは隠れ毒親との関係
編集部(以下、略) 石川さんはこれまで多くの毒親介護をしている人に取材していますが、「毒親」にもいろいろあるようですね。
石川結貴さん(以下、石川) 「親ガチャ」という言葉が2021年の流行語大賞トップ10に選ばれましたが、基本的に子どもは親を選べませんよね。子どもを虐待したり支配したりする親に当たれば当然苦しい思いをするわけです。
「老い」や「病」によって毒親っぽくなるケースもありますよね。認知症になって暴言を吐くとか。ただ、これは本当の毒親ではなく、症状が落ち着けば関係を修復できる可能性もあります。
このほかに「隠れ毒親」というのもあるんです。取材を通じて、本当に一番苦しいのは隠れ毒親だと感じました。
殴られてもいない、ご飯を食べさせてもらえないという経験もなく、塾や習い事もさせてもらって、盛大な結婚式も挙げさせてもらって、子育ても手伝ってもらってきたけど、どこか我慢し続けてきて親の期待に添うように頑張ってきた人たちが、親の老いに向き合ったときの苦しさ。介護する段階になって、毒親だったと気づくパターンは多いんです。
明らかな毒親の場合は、自分でもあきらめがつくし周りからも分かりやすい。「アルコールに溺れて暴力をふるうお父さんじゃ大変だよね」「あんなにキツいお母さん、離れていたほうがいいよ」と言ってもらえる。でも隠れ毒親は周りから見ていい親だから「あんなにいいお母さんなのに面倒見ないなんてどういうつもりだ」と言われてしまいます。
自分でも、「こんな風に思う自分が悪いんだ」と思ったり、「今更過去をどうこう言う自分の心が狭いんだ」と思ったりしてしまう。身近な人に相談するのもためらわれます。
特に母と娘は、過去に遡って積もる思いがあるんですよ。50代以降の人は、「女の子は結婚が幸せなのだから学歴はいらない」という育て方をされた世代ですから、「本当はこの仕事がしたかったのに母の希望でこちらへ進んだ」とか、兄や弟に比べて大事にされなかったという意識もあります。
ところが介護となると「娘がやるべき仕事」という社会的な意識が現在もまだまだ残っているわけです。親が入院して退院するときに「では娘さん、退院後は頑張ってお世話してくださいね」と病院側も当然のように圧をかけてきます。
そこまで大事にされなかった私がなぜこんな負担を負わないといけないのか。それに輪をかけて親が自分中心の振る舞いをする、何を言っても全否定してくると、心がつぶれてしまいますよね。