トップランナーの仕事術 -5つのルールー
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1テレ東・大江麻理子「来た波には乗ってみる」が信条
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2キムタクのちょいマックを仕掛ける人 ズナイデン房子←今回はココ
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3建築家・吉田愛「ワークとライフは分けずに両方充実」
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4グランドフードホール岩城紀子「その仕事に愛はあるか」
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5ココナラ南章行「組織を引っ張るのは僕でなくビジョン」
コロナ禍の今年、大きな影響を受けた外食業界。日本マクドナルドも来店客数は減少したものの、複数人数分のテークアウトやドライブスルー、デリバリーの利用が増えて客単価は向上。前年超えの業績を確保しています。
マクドナルドのマーケティングを率いるのが、かつて資生堂や日清食品などで数々のヒット施策を導いたCMOのズナイデン房子さん。仕事に取り組む上で大事にしているルールについて聞きました。

―― 感染症対策が大きな社会的課題になり、顧客の意識や行動が大きく変化しました。今年、何を重視してマーケティングを実施してこられましたか。
ズナイデン房子さん(以下、敬称略) 一番きちんとやっていきたいと思ったのは、お客様の変化を見逃さないことです。コロナの状況下で、学校が休校になったり両親がリモート勤務で家にいたり、今まで当たり前にできていたことができなかったりして、生き方や暮らしの価値観が大きく変化したと思います。そうした変化を捉えて、マーケティング戦略やプランにいかに具現化して、お客様に響くものにしていくかを日々やっていた1年でした。
マクドナルドは食事を提供しているブランドなので、やはりお客様の安全安心に対する意識はものすごく高いのです。「大丈夫なのだろうか」というお客様の気持ちに寄り添い、とにかく早く対応をしました。さらに、CMを通したメッセージの伝え方も変えていきました。
「ドライブスルーでちょいマック」その意図は…
私は2年前に日本マクドナルドに入社した際、1カ月の店舗研修をしました。その時に驚いたのが、全国約16万人のクルー(店舗アルバイトスタッフ)の皆様が1時間ごとに手を洗い、洗い方や使用する洗剤もすべてマニュアルで徹底されていることでした。キッチンや客席の清掃なども同様です。とにかくクレンリネス(清潔さ)の追求をここまでしているということをまずお客様に知っていただくコミュニケーションを店舗やウェブサイトで展開しました。
また、感染が拡大し始めた春からGW頃には、人との接触を避けたいお客様が多くなりました。普段からマクドナルドに来てくださっている方は、テークアウトやドライブスルー、デリバリーサービスもご存じですが、そうでないお客様もいます。また、4月にはスマホから注文・支払いができるモバイルオーダーを全国展開しました。そこで、人との接触を減らして利用できるサービスの「コンビニエンス(利便性)」を伝える広告を作りました。
「安全安心」と「コンビニエンス」。この2つのお客様ニーズにはとにかく早急にお応えしようと、店舗の現場と一緒になって取り組みました。
―― メッセージの作り方も変わったのですか。
ズナイデン 広告展開やプロモーションの中で伝えるストーリーも、よりお客様の気持ちに寄り添うように進化させました。
例えば、ドライブスルーで商品が買えるという便利さやメリットも、強調すると押しつけがましくなりかねません。今年、年間を通して起用した木村拓哉さんが「ドライブスルーでちょいマック~」と歌うCMは「そう言えば、マックのドライブスルーって、あったよね」という空気感をお伝えしようとしたもので、高い好感度を得ました。
また、毎年夏にはハワイアンメニューを展開していますが、どこにも出掛けられない方が多かった今年は、おうちでハワイ気分を味わっていただきたいと「マックでどこでもハワイ」というキャンペーンテーマに変更しました。秋に提供する月見バーガーシリーズでは、帰省できない方も多い中、離れて暮らす父と娘が同じ月を見ながら心を通わせるという設定で、「心と心のつながり」を訴求するCMを展開しました。
ズナイデン このように、マクドナルドはお客様との接点である店舗、メニューを通して、人と人がつながる媒介となれる点がブランドの最大の魅力だと考えています。特にコロナ禍のような状況では、ブランドへの「信頼」がより重要になってくるので、信頼への評価をいかに高めていくかに今は大きな力点を置いています。
自分自身が仕事をするときは、一緒に働く仲間、店舗の皆様、そしてブランドに対して常に誠実で真摯であることを自分の中で大切にしています。
例えば期間限定プロモーションの初速が予定通りに立ち上がらないといった場合も、まず真摯に、ハンブル(謙虚)にその事実を認めること。そうしてこそ迅速に次の判断に移ることができますから。
