食事はカラダを作る源。健康で長生きするためには、カラダに必要な栄養成分を食事できちんと摂取することが大切です。しかし、どの成分をどれだけとる必要があるのか、どうやってとるべきなのか、不足するとなぜ良くないのか――今回は、骨を強く保ち、感染症やがんの罹患リスクとの関連で今、世界中の注目を集めるビタミンDを取り上げます。

(写真=123RF)
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 ビタミンDは、脂溶性のビタミンの一種。自然界に存在するビタミンDには、主にマイタケやキクラゲなどのキノコ類に含まれるビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と、魚肉や魚介類の肝臓などに多く含まれるビタミンD3(コレカルシフェロール)が存在する。昭和の時代に学校や保育園などで配布されていた肝油ドロップは、サメの肝臓に含まれるビタミンAやDを子どもに補給させ、健康な成長を促すためのものだったということをご存じの方もいるだろう。

 興味深いのは、ビタミンDは体内でも合成できるという点だ。「ビタミン」とは人体の機能を正常に保つために必要な微量栄養素のうち有機化合物を指し、体内ではほとんど作ることができないものが多い。

 だが、「ビタミンCやB群などとは異なり、ビタミンDは食事で供給する以外にも皮膚のコレステロールから体内で作り出すことができます。紫外線を浴びると皮膚に存在するコレステロールの一部(正確にはコレステロール中間体)がビタミンDの前駆体に変換され、体温でビタミンDが作られます」と、老化とビタミンDとの関係について研究を行う国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部副部長の細山徹さんは説明する。「さらに、食事でとったビタミンD2やD3、体内で作られたビタミンDは、その後肝臓や腎臓で変換されて活性型ビタミンDとなります。この活性型ビタミンDの受容体は全身の臓器にある細胞で見つかっています」(細山さん)

ビタミンDは2つのルートから供給される
ビタミンDは2つのルートから供給される
体内のビタミンDは、食品からのビタミンD摂取と、紫外線を浴びることで皮膚のコレステロールから合成する方法の2ルートで供給される。体内で合成したり魚介類からとれるビタミンD3は、キノコ類からとれるビタミンD2と構造が少し異なるが、いずれも肝臓や腎臓での代謝を介して活性型のビタミンD(1α,25(OH)2D)に変換され、全身で使われる。主な働きにはカルシウム(Ca)吸収の促進、骨形成への寄与などがある。

 ビタミンDが今、世界で注目を集める理由はどこにあるのだろうか。ここから詳しくその機能について見ていこう。