体を作り、動かすのに不可欠な栄養素「たんぱく質」。近年の研究から、たんぱく質を十分にとっておくことは、筋肉の維持だけでなく、病気の予防にも役に立つということがわかってきました。でも、とり方次第ではムダになってしまうこともあるようです。たんぱく質はいつどのようにとるといいのか、どんな食材でとるといいのかについて紹介します。

運動量が減ったときこそたんぱく質の摂取が大事
たんぱく質とはアミノ酸が鎖状に50個以上つながったもののこと。アミノ酸には20種類あり、その組み合わせや並び順が異なるたんぱく質が体の中には約10万種類あるといわれている。
「筋肉や骨、皮膚、内臓などのほか、体の機能を調節するホルモンや酵素、血液、免疫細胞、病原体の働きを低下させる抗体などもみなたんぱく質でできている。その材料となるのが食事でとるたんぱく質だ」と立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんは説明する。
たんぱく質は材料として使われるだけではなく、体を動かすエネルギー源にもなる。「空腹状態が続くと血糖の維持に必要な糖は温存され、アミノ酸からエネルギーを作るモードに切り替わる。ところが、アミノ酸は糖や脂質のように体内に貯蔵できないため、血中にエネルギーを作るのに使えるアミノ酸がないと、筋肉を分解してアミノ酸を供給することになる。ダイエットなどで食事を減らすと筋肉量が減りやすいのはそのためだ」(藤田教授)。
筋肉量が減ると、姿勢を保てなくなったり転倒しやすくなる。さらに、「太りやすくなるなどいいことはひとつもない」と藤田教授。太りやすくなるのは、筋肉を維持するのにたくさんのエネルギーが使われるからだ。筋肉量が減るほど体を維持するために使われるエネルギー量が減る――つまり基礎代謝量が低下するというわけだ。
「何より重要なポイントは、筋肉は減るのが早く、取り戻すには時間がかかるということ。例えば活動量の低下に伴い筋肉量が3%減ったとすると、その減った分を筋トレで取り戻すのに3カ月はかかる。ここ数年はリモートワークは増えて活動量が減ったという人も少なくないようだが、運動しない人ほど筋肉量を減らさないように食事でしっかりたんぱく質をとっておく必要がある」と話す。
