体を作り、動かすのに不可欠な栄養素「たんぱく質」。筋肉の維持だけでなく、病気の予防にも役に立つ“最重要”栄養素の1つです。前編では、たんぱく質の役割、たんぱく質食材をいつ、どう食べるといいのかを紹介しました。後編ではたんぱく質不足と病気や肥満、美肌などの関係について紹介します。

感染症や肺炎リスクの低下にも役立つたんぱく質

 たんぱく質は、筋肉量や体力の維持だけでなく、免疫機能が正常に働く上でも不可欠だ。病原体の侵入を食いとめる鼻やのど、消化管の粘膜はもちろん、病原体を排除しようと駆使する免疫細胞も免疫細胞が作る抗体もたんぱく質でできているからだ。たんぱく質が不足すると感染リスクや感染時の重症化リスクが高くなり、免疫細胞を作る胸腺という組織の萎縮や、リンパ組織の障害が起こりやすいという報告もある(*1)。

 また、高齢者においてはたんぱく質摂取量が多いと肺機能も高いとされる。その理由のひとつは呼吸にも筋肉が使われるからだ。呼吸は、横隔膜や肋骨の間にある肋間筋といった「呼吸筋」と呼ばれる筋肉の動きによって成り立っているため、筋肉量が低下すると呼吸機能も低下しやすい。

 また、昨年末、国立がん研究センターが発表した、たんぱく質の摂取量と肺炎死亡リスクの関連についての調査報告では、女性は摂取カロリーに対するたんぱく質摂取量の割合が高いほど、肺炎死亡リスクが低いことが明らかになっている(*2)。一方、男性にはその傾向は見られなかった。理由は明らかではないが、男性では全体的にたんぱく質摂取量の割合が女性より低かったこと、喫煙や飲酒といった生活習慣の影響が大きかったことと関係している可能性があると研究チームはまとめている。

*1 Eur J Clin Nutr.2003 Sep;57 Suppl 1:S66-9.
*2 Am J Clin Nutr.2021 Dec 16;nqab411.多目的コホート(JPHC研究)における約18年の追跡調査結果。
歳をとってからのほうがたんぱく質は大事
歳をとってからのほうがたんぱく質は大事

たんぱく質を多くとる人ほど認知症になりにくい

 たんぱく質の摂取は認知機能の維持にも役立つようだ。東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、赤血球数や血中のアルブミンというたんぱく質の量が低い人は、認知機能低下リスクが2倍以上になるという。赤血球やアルブミンの量は、たんぱく質摂取量が不足すると低下することが知られている。

 一方、国立長寿医療研究センターは、1997年に開始した「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の調査から、40〜60代で血液中にプロリンというアミノ酸が多い人は、知識を蓄える「知識力」が年齢とともに高まると報告している(*3)。

 プロリンは、動物性たんぱく質にも植物性たんぱく質にも含まれる非必須アミノ酸だが、この調査からは、動物性プロリンのみで効果が確認された。その理由として、研究チームは「同じプロリンでも、動物性と植物性で、アミノ酸の並び方に違いがあるからではないか」と推測している。

*3 日本未病システム学会雑誌、20 (1)、99-104、2014.