どんな食事が病気の予防になるの? また、どんな習慣がアンチエイジングにつながるの? 世界中で進む、“健康”にまつわる研究について、注目の最新結果をご紹介します。
今回紹介するのは、お酒と食に関する研究。ひとつは、「パスタはパンより食後血糖値の上昇が穏やかで、その秘密は構造にあった」という報告。もうひとつは、お酒好きには気になる「ほどほどの飲酒でも脳は老化する」という結果だ。
パスタは食後血糖値の上昇が穏やか、その秘密は構造にあった
パスタはパンに比べて食後の血糖値を上げにくく、インスリン反応も低いことが確認された。デュラム小麦粉を使ったパスタ(スパゲティ、ペンネ)とクスクス、パンを比較した研究による成果で、フィンランドとイタリアの研究者らが発表した。
パンなどの炭水化物を食べると、消化された糖質は血中に取り込まれ、血糖値は上昇する。しかし血糖値の上昇に反応して膵臓からインスリンが分泌されるため、血糖値は元に戻る。だが急激な血糖値の上昇が続くと、血管にダメージを与え、糖尿病や心臓病などのリスクが高くなるといわれる。
研究では、まず血糖値とインスリン反応を調べるため、健康な男女(各試験30人)を対象に、2つの試験が行われた。
1つの試験はスパゲッティとペンネ、クスクス、ブドウ糖溶液(=対照群)を比較。もう1つの試験はスパゲティとペンネ、パン、ブドウ糖溶液を比較した。血糖値の変化は、時間ごとの血糖値を示す曲線と時間軸(横軸)で囲まれた面積(血中濃度-時間曲線下面積)で評価した。
結果、パスタはほかの食品と比較して、血糖値の2時間曲線下面積が小さかった。クスクスに比べてスパゲティでは40%減、ペンネは22%減で、パンと比較するとスパゲティは41%減、ペンネは30%減だった。食後のインスリン反応も、パスタはクスクスやパンに比べて低く、ペンネよりスパゲティのほうが低かった。一方、クスクスとパンの食後インスリン反応はブドウ糖溶液と変わらなかった。
さらに、健康な男女(26人)を対象に咀嚼(そしゃく)試験が行われた。一口サイズの上記4つの食品をランダムに食べてもらい、飲み込める状態まで咀嚼した後、容器に吐き出してもらった。その結果、パスタはパンやクスクスと比較して、咀嚼に時間がかかっていることがわかった。スパゲティでは平均34回、ペンネは38回だが、パンは27回、クスクスは24回だった。咀嚼時間はスパゲティが21秒、ペンネは23秒、パンは18秒、クスクスは14秒だった。
咀嚼した物を分析すると、パスタは咀嚼後も大きな粒子の割合が高かった。またパスタに含まれるでんぷんの分解速度は、パンとクスクスに比べて遅いことも示された。唾液量もパスタで少なかった。
こうした違いはパスタの構造が関わっているようだ。小麦粉にはたんぱく質(グルテン)が含まれているが、パスタはたんぱく質がネットワークを組んでゼラチン化したデンプンを包み、密な状態になっている。そのためパスタはゆっくり消化され、食後血糖値の上昇が穏やかになるという。