ペットから得られる安らぎや、共に過ごす時間はかけがえのないもの。でも、一緒に暮らすからこそ、お互いの健康のために気をつけたい病気や、接し方のポイントがあります。イヌ、ネコからうつる皮膚病やトリからうつる肺炎のリスクについて解説します。

 ペットの愛らしい仕草や、触れたときの気持ちよさに癒やされる人は少なくない。実際、動物と触れ合うと、“幸せホルモン”であるオキシトシンの分泌が高まるという報告もある。イヌとの散歩は生活リズムを整え運動習慣ができるなど、ペットとの暮らしは健康的な生活にもつながる。

 こうした効用や在宅時間の増加から、新型コロナウイルス下に新たにペットとの暮らしを始める世帯も増えている(グラフ)。

コロナ下でイヌ・ネコの新規飼育数が増加
コロナ下でイヌ・ネコの新規飼育数が増加
毎年ペットフード協会が行っている「全国犬猫飼育実態調査」によると、2022年のイヌの新規飼育頭数は42万6000頭、ネコの新規飼育頭数は43万2000頭。新型コロナウイルス感染症が始まった2019年のそれぞれの新規飼育頭数に比べてイヌは7万6000頭、ネコは3万8000頭増加。同様に新規飼育世帯数もイヌが6万4000世帯、ネコが3万8000世帯増えた。

 一方、2022年のペットフード協会の調査では、イヌ、ネコともに約9割が室内で飼育され、昔に比べてより“密”な関係になっていることもある。

 しかし、飼い方次第ではこうした親密な関係がペットとの暮らしに暗い影を落とす要因になる。例えば人獣共通感染症だ。

 「ヒトに感染する病原体の約6割は、脊椎動物とヒトとの間で感染する人獣共通感染症を起こす」と北海道大学の苅和宏明教授は指摘する。よく知られているのは狂犬病やペストだが、2012年以降中東地域で感染が広がり致死率が35%と高いMERS(中東呼吸器症候群)もヒトコブラクダが媒介する人獣共通感染症だ。

 感染は、野生動物からのこともあるが、一番接触の機会があるペットが感染源となることも多い。「例えばイヌやネコの口の中には多くの常在菌がいて、これらもヒトの病気を引き起こす原因に。糞尿や、感染動物の血を吸ったダニやノミ、蚊を介して病気になることもある」と苅和教授。感染症に限らず、ペットの唾液や抜け毛がアレルギーを引き起こすリスクにもなる。

 大切な家族の一員だからこそ、共に健康に過ごすために必要なのが、“密”を避け、動物も環境も清潔に保つこと。苅和教授は「人獣共通感染症を恐れすぎて、ペットと触れ合わないのはもったいない。正しい知識と対策で生活を楽しんでほしい」と話す。