頭痛、不眠、後鼻漏などの全身の不調の背景に「慢性上咽頭炎」が関わっているかもしれない。鼻と喉の境目にある「上咽頭」は炎症が起こりやすい部位。悪化すれば、自律神経や免疫の働きにも影響し、さまざまな体調不良を招く場合がある。上咽頭の知られざる実態を紹介した前編に続き、今回は「上咽頭うがい」や「鼻うがい」など、上咽頭の炎症を抑える具体的なセルフケア方法を紹介する。

鼻腔をまるごと洗う「鼻うがい」などで上咽頭をケアしよう
鼻腔をまるごと洗う「鼻うがい」などで上咽頭をケアしよう

 「自律神経や免疫とも密接なかかわりがある上咽頭は、健康の土台を担う場所。上咽頭の状態を良好に保つことが、自律神経のバランスを整え、心身の健康を守ることにつながる」と、堀田修クリニックの堀田修院長は話す。上咽頭は炎症が起こりやすい部位だけに、炎症の悪化を防ぎ、慢性化しないようにすることが大切だ。

 では、どのようなケアを行えばいいのだろう。堀田院長は「『温める』『洗う』のセルフケアが有効」だという。

 「首の後ろの下半分あたりを温めると、上咽頭周辺の血液やリンパの流れが改善する。とくにあお向けの姿勢で『首湯たんぽ』をすると、鼻の通りが良くなり、頭痛が軽減する人が多い」(堀田院長)。筋肉の緊張が緩和され、首や肩の凝りなども和らぐ。

 ドライヤーの温風や温湿布、蒸しタオルなどで温めたり、外出時はネックウオーマーやストールなどを活用したりして、首の後ろが冷えないように心がけよう。

生理食塩水での鼻うがいが効果的

 「洗う」ケアには、上咽頭をピンポイントで洗浄する「上咽頭洗い」と、上咽頭を含めた鼻腔全体を洗う「鼻うがい」の2つがある(次ページ参照)。いずれも洗浄液は水ではなく、人肌の温度に温めた生理食塩水で行うのがポイント。水は浸透圧が低いため、鼻に入れるとツーンとした刺激や痛みをもたらすことがあるからだ。

 さらに、堀田院長は「生理食塩水には、ウイルスの増殖を抑える効果が確認されている」と強調する。「一定の濃度の生理食塩水が細胞に浸透すると、ナトリウムの作用によって次亜塩素酸を生成。また、細胞内に浸透したナトリウムを細胞外に排出するために、ウイルスの複製に必要なエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)が使われて枯渇することで、ウイルス増殖の抑制につながる」(堀田院長)。

 通常の上咽頭洗いや鼻うがいで使うのは、体液と同程度の浸透圧となる塩分濃度1%の生理食塩水だが、「カゼをひいたときなどは、ウイルスの増殖の抑制効果が期待できる塩分濃度1.5%以上の生理食塩水を使うといい」(堀田院長)。