共感できない、自分であきれるほどこだわりが強い、自己管理ができない…発達障害の「グレーゾーン」は障害レベルではないのになぜ生きづらいのか。よくあるグレーゾーンのタイプと生きづらさの克服方法について、岡田クリニックの岡田尊司院長に話を聞いた。
>前編:「発達障害」でも「グレーゾーン」でも生きづらさは伴う
1.
頑なで、まわりを不快にさせることが多い
ASDグレーゾーンの「こだわり症・執着症タイプ」は…

ぐるぐると部屋を歩きまわったり、同じ食べ物を食べたがったり――。こうした1つの行動パターンへの執着やこだわりは、ASDやそのグレーゾーンの人にしばしば見られる特性だ。社会的コミュニケーション障害が伴わない場合はASDとは診断されないが、こだわりの強い状態は生きづらさにつながる。
「こだわりはどんな人にもあり、同じ動作を繰り返すことなどで体調が整ったり、安心感が得られたりする面もある。しかし、生活に支障が出るレベルとなると一種の障害である『こだわり症』と考えられる」と岡田院長は説明する。例えば、規則を守ることにこだわり融通が利かない、細かく決まったパターンで暮らさないと落ち着かないなど、高次の固執が現れるのだ。
このタイプは、自分の価値観ややり方で人と対立しやすい。「これがいいと思い込むとほかの方法に目が向かないため、子育てなどで意見が合わずに夫婦間で衝突することも」(岡田院長)。部分にとらわれず、視野を広く持つよう心がけることが対策になるという。
また、このタイプは、自分をわかってもらえず否定されてきた経験を持つことが多い。円滑なコミュニケーションのためには、周囲の人もいきなり意見を否定するのではなく、一旦「そうだね」と受け入れ、その上で不安要素を示したり、代替案を出したりすると案外執着が外れるという。
- 部分にこだわりすぎず、物事を全体で見る
- 自分の中のとらわれを自覚する
- (まわりの人は)いきなり否定せず、一度受け入れてから意見するといい
【COLUMN】
幼少期の愛情不足が生きづらさの原因になることも
発達障害グレーゾーンのなかには、発達障害と同様の脳の特性が原因となるケース以外に、幼少時の愛情の受け方によって生じた愛着障害やトラウマが関係していることがある。こうした場合は、原因となる愛着障害や心の傷の手当てをしなければ、生きづらさは改善しない。
例えば、こだわり症/執着症タイプのなかには、幼少期に満たされなかった欲求や不充足感が残り、過剰な承認欲求などにとらわれ続ける人がいる。とらわれから解き放たれるには過去の不充足感を解消する必要がある。