「酒の総量」が問題であって「種類」はあまり関係ない

 少量の飲酒であっても、がんの罹患リスクが上がることが明らかなのは分かった。だが、がんのリスクができるだけ上がらないような酒の飲み方はないのだろうか。

 「最も着目すべきポイントは『お酒の総量』。お酒の種類はあまり関係ありません(*3)。アルコールそのものに発がん性があり、さらにアルコールの代謝副産物であるアセトアルデヒドもがんの原因となることが分かっています。私たち日本人は遺伝的にアセトアルデヒドの分解能力が低い人が一定数おり、少量でも影響を受けやすいのです。このことから、飲み始めた年数から今に至るまでどれだけアルコールを飲み、そのリスクにどれだけさらされてきたかが重要となるのです」(財津さん)

 財津さんによると「お酒を飲む習慣を見直してほしい」という。確かに、酒好きの多くは、さして飲みたくもないのに、飲むことが「クセ」になっている人が多い。夕方になったら当たり前のようにカシュッとビールのプルトップを開ける、風呂あがりに水代わりにチューハイを飲む、仕事帰りにコンビニに寄って酒を買ってしまう……。

 「まずはこうした『飲むクセ』を変えていくといいですね。最初は週に1日でいいので、休肝日を作ってみましょう。お酒をストレス発散の道具にしたり、睡眠導入剤の代わりに寝酒にしたりするのも避けましょう」(財津さん)

 財津さんは、「一生で飲むお酒の量は決まっている」と考えて、休肝日で「飲まない日貯金」をして、「飲酒寿命」を延ばしましょう、と提案する。これには私も賛成だ。

*3  ただし、ウイスキーなどアルコール度数の高い酒は、食道がんなどのリスクをより高める傾向があるともいわれている

イメージ写真/PIXTA 図版制作/増田真一

[日経ビジネス電子版 2022年3月22日付の記事を転載]

『名医が教える飲酒の科学
一生健康で飲むための必修講義』

著者:葉石かおり
監修:肝臓専門医・浅部伸一
発行元:日経BP

アマゾンでの購入はこちらから

 コロナ禍で酒との付き合い方が激変!? 今読みたい科学の知見を一冊に。

 様々な病気のスペシャリストや、酒の人体への影響を調べる研究者が、最新の科学知識を分かりやすく解説。

 酒が大好きな人も、健康にちょっぴり不安を感じている人も、下戸だけど人体のしくみに興味がある人も、アフターコロナに備えて今こそ読みたい科学の知見が満載です。
葉石かおり(はいし かおり)さん
酒ジャーナリスト/エッセイスト
葉石かおり(はいし かおり)さん 1966年東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経てエッセイスト・酒ジャーナリストに。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に執筆・講演活動を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外で日本酒の伝道師SAKE EXPERTを育成する。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『日本酒のおいしさのヒミツがよくわかる本』ほか多数。