免疫による防御反応は「3段階」

 ありがたいことに、私たちにはこの免疫が備わっているおかげで、新型コロナウイルスをはじめとするさまざまな病原体が体の中に侵入するのを防ぐことができ、また侵入を許した場合でも退治できる。そして、免疫による防御反応は「3段階」あるという。

 「ウイルスなどの病原体は、3段階で撃退されます。第1段階は『自然バリア』と呼ばれ、皮膚や粘膜などが病原体の侵入を防ぎます。そして、万が一、侵入を許した場合は、次の第2段階である『自然免疫』で、マクロファージなどの食細胞が病原体をパクパクと食べてくれます。それでも退治できない場合、最後の第3段階『獲得免疫』で、その病原体に適した攻撃を繰り出します」(安部さん)

免疫は3段階
免疫は3段階
横軸は1日の平均飲酒量(純アルコールで23gが1単位)に飲酒期間(年数)をかけたもの。縦軸は飲酒をしない人と比較した何らかのがんにかかるリスク(出典:Cancer. 2020; 126(5):1031-40.)

 免疫による体を守るシステムは、このように非常に高度な仕組みで構成されている。それでは、この3つの段階のうち、どこにアルコールが影響を与えるのだろうか?

 「実は、3段階いずれにも、アルコールが直接的な影響を与えます。ヒトの免疫にとって、お酒は好ましくないものなのです」(安部さん)

 ショック……。誰か噓だと言ってほしい。

 3段階について、それぞれの詳しいメカニズムを教えてもらおう。

 「まず、第1段階の自然バリアは、体のさまざまな箇所にあり、大きく3つに分類されます。ひとつは涙、汗、唾液、尿などの『物理的障壁』です。また目には見えませんが、腸管にある柔毛(じゅうもう)、気道にある線毛(せんもう)もまた、体内へ侵入しようとする病原体を外へと押し出す運動を常にしています。風邪をひいて痰が出るのは、線毛の働きによるものです」(安部さん)

病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類
病原体の侵入を防ぐ「自然バリア」は3種類

 こう聞くと自分の汗や涙まですべて愛おしくなる。ほかにはどんなバリアがあるのだろう。

 「2つ目のバリアは『化学的障壁』です。胃などの粘液に含まれる酵素や酸性物質、皮脂に含まれる脂肪酸や乳酸、また体の表面に存在する抗菌ペプチドがこれに当たります」(安部さん)

 そして3つ目は「微生物学的障壁」。「これは、皮膚や腸などに存在する常在菌を指します。やたら顔を洗ったり、風邪をひいて少し具合が悪かったりすると抗生物質を飲んでしまう人がいますが、こうしたことを考えると『もったいない』と思いますよね」(安部さん)

 風邪をひいて処方された抗生物質を飲んだのはいいが、下痢をしてしまうことがあるが、この現象により「ありがたい常在菌が減ってしまう」のだという。

 「若い世代は自然バリアがしっかりしているため、病原体に強いのです。新型コロナを例にとっても分かるように、若い世代は感染しても重症化しにくいですよね。これは自然バリアがしっかり働いているためと考えられます。ただし個人差があるので、『若いから絶対に重症化しない』とは言い切れません」(安部さん)

 汗や胃酸、常在菌などによって守備が固められている自然バリア。先ほど、ウォッカのようにアルコール度数の高い酒に注意したほうがいいと説明したのは、のどの粘膜にある自然バリアを壊してしまうからなのだ。