閉経後の飲酒が乳がんと関係しない理由は?

 一方で気になるのは、閉経後では飲酒と乳がんのリスクに有意な関係が見られなかったことだ。これはなぜだろうか?

 「日本人女性における閉経後の飲酒と乳がんの罹患リスクとに有意な関係が見られなかった理由の1つに『肥満の割合』があります。閉経後、エストロゲンは卵巣ではなく、主に皮下脂肪で作られます。欧米人に比べ肥満の割合が少ない日本人の場合、皮下脂肪で作られるエストロゲンがもともと少ないため、飲酒によってエストロゲンが増加する量も少ないため、乳がんへの影響が抑えられたと考えられます」(松尾さん)

 「中年以降はシワが目立たないから少しぽっちゃりくらいがいい」と都合のいい言い訳をしてきたが、やはり何事にも限度がある。松尾さんによると、「肥満度を表す数値として用いられるBMIが、25以上になると乳がんの罹患リスクが上がる」とのこと。

 国立がん研究センターの「がんのリスク・予防要因 評価一覧」(*2)を見ても、「肥満」は閉経前の乳がんではリスクを上げる「可能性あり(BMI30以上)」、閉経後では「確実」にリスクを上げる、となっている。

がんのリスク・予防要因 評価一覧
がんのリスク・予防要因 評価一覧
出典:国立がん研究センターのホームページより

 今回の研究結果を見て、将来の乳がんリスクのためにも、飲酒量や飲酒頻度に加え、体重のコントロールも考えたほうが良さそうだ、と痛感した。

 次回は引き続き、乳がんの予防法を中心に松尾さんにお話を伺っていく。

取材・文/葉石かおり

松尾恵太郎(まつお けいたろう)さん 愛知県がんセンター がん予防研究分野分野長
松尾恵太郎(まつお けいたろう)さん 1996年岡山大学医学部卒業。亀田総合病院、岡山大学医学部附属病院医員(第二内科)、愛知県がんセンター研究所(研修生)、ハーバード公衆衛生大学院疫学部(国際がん研究機関ポストドクトラルフェロー)を経て、2003年より愛知県がんセンター研究所疫学・予防部研究員。2013年より九州大学大学院医学研究院予防医学分野教授。2015年より愛知県がんセンター研究所遺伝子医療研究部部長。2018年4月より現職。