ポイントは「力と柔らかさ」

 では、自宅で何をすればいいのでしょうか。「ポイントは、『力と柔らかさ』と覚えてください。力をつける部分と、柔軟性が必要な部分があるのです」と菊池守さん。

 力とは、歩くのに必要な筋力の維持のこと。よく知られているように、お尻、太ももの筋肉を鍛えられる“筋トレの王様”「スクワット」や、かかとを上げ下げして、ふくらはぎを鍛える「ヒールレイズ」などを続けるのがいいそうです。

 では「柔らかさ」とは? 「特に重要なのは、アキレス腱(けん)の柔軟性です」(菊池守さん)

 「快適に、スムーズに歩行動作が行えるためには、アキレス腱の柔軟性がカギ。これが、痛まない足、トラブルが起きにくい足にすることにもつながります。ですが、アキレス腱は加齢とともに硬くなりやすいようです」と同院医師の菊池恭太さんは言います。

 アキレス腱は、かかとの骨とふくらはぎの下腿(かたい)三頭筋をつなぐ、人体最大の腱です。15センチほどなのに、1トンの重さに耐えうるといわれるほど、強靱(きょうじん)です。

アキレス腱伸ばしで柔軟性をキープ

 「足には土踏まずに代表されるようにアーチ構造があり、これが私たちの体重を支えています。アキレス腱が硬いと、歩く際に、すねが前に倒れづらくなります。すると、足を支える構造であるアーチをつぶすという代償動作を利用して、すねを倒すことになります。どんどんアーチがつぶれ、これが外反母趾、足底腱膜炎など、さまざまな足の痛みの原因にもなってしまいます。足の痛みを防ぐには、足ではなく、足より“上流”のアキレス腱の柔軟性が重要なのです」と菊池恭太さん。

 さらに、アキレス腱が硬いと、血流低下にもつながるそうです。ふくらはぎは第2の心臓ともいわれ、その伸縮する動きがポンプ作用となり、静脈の血液を押し上げる役割を担っています。アキレス腱につながるふくらはぎの下腿三頭筋がしっかり使われないと、ふくらはぎのポンプ作用が落ち、冷えやむくみも起きやすくなります。

 そのため、まずは「壁を使ったアキレス腱伸ばし」を行うといいそうです。これは、壁に手で体重をかけながら、じっくり伸ばす「アキレス腱伸ばし」です。

 アキレス腱伸ばしは、足の若返りの万能薬ともいえるほど効果があるそうです。同院では、足の悩みがあるほとんどの方にアキレス腱伸ばしを指導しています。「アキレス腱伸ばしをしっかり行うだけで、足底腱膜炎の半数の人で痛みが治まるなど、効果を実感します」と菊池恭太さん。

壁に体重をかけ、前の方のひざをゆっくり曲げる。アキレス腱に伸びを感じながら30~60秒キープする。その後、足を入れ替えて同様に行う。各5回ずつ
壁に体重をかけ、前の方のひざをゆっくり曲げる。アキレス腱に伸びを感じながら30~60秒キープする。その後、足を入れ替えて同様に行う。各5回ずつ