国民健康・栄養調査の結果を受け、食品メーカーも困惑している。食物繊維が豊富な大麦や雑穀の商品の特徴として「“1日の不足分の食物繊維が補える”といった表現が使いにくくなってしまった」と、大手穀物メーカー、はくばくの商品戦略担当者は頭を抱える。

低分子水溶性の機能性はまだわからない

 難消化性でんぷんは、文字通り消化されずに大腸に届き、食物繊維としての機能性を発揮する成分としておなじみだが、低分子水溶性食物繊維は多くの人にとって聞き慣れない成分だろう。これは、最小単位の糖(ブドウ糖や果糖など)が3以上つながった(重合した)難消化性のオリゴ糖類だ。大豆オリゴ糖やゴボウやタマネギのフラクトオリゴ糖、乳製品のガラクトオリゴ糖などを指す。

 白米の場合、A法での成分値、100g当たり1.5gのうち0.9gは低分子水溶性食物繊維が占めている。「未消化のでんぷんが低分子化したものかもしれないが、機能性はこれまでほとんど研究されてこなかったのでわからない」(青江教授)。

 食物繊維の重要な機能には食後の高血糖を抑える作用があるが、白米は食後の血糖値を比較的上げやすい食品の1つとされ、それを裏付けるデータも多い。食物繊維の総量アップに大きく“貢献”した白米の低分子水溶性食物繊維だが、食後の高血糖を抑えてくれるとは考えにくい。

 食生活が変わらなければ食物繊維の摂取量も変わらないと考えるのが妥当。「白米ごはんを玄米ごはんに変えたり、白米ごはんに大麦や雑穀を混ぜたりすることが、食物繊維の摂取量を増やすのに有効」(青江教授)であることは、今後も変わらない。「白米を食べれば食物繊維はたっぷりとれる」と早合点しないよう注意したい。

摂取量が理想に近づいたわけではない
 米国やカナダの食事摂取基準を参考に、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では成人は1日に24g以上の食物繊維の摂取が理想的という考えが示されている。しかし、実現性も考慮し、策定当時の摂取量、1日約14gとの間をとって決められたのが現在の目標量、男性21g以上、女性18g以上だ。
 これはP法のデータをもとに作られたものなので、A法導入で2019年の食物繊維摂取量が1日18.8gになったからといって摂取量が理想に近づいたわけではない。一般的な国際統計はP法での成分値を用いて計算した摂取量だから、日本人の摂取量も同じように計算しなければ比べられないからだ。2019年以降はA法の成分値を導入して計算しているので「2025年に改定される食事摂取基準では間違いなく食物繊維の摂取目標量は増え、1日24~25gになるのではないか。1日18~19gでは、やはり食物繊維不足ということになる」と青江教授は言う。しばらく混乱は収まりそうにない。
「理想」と「摂取基準」は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書から。「現状」は2019年の国民健康・栄養調査の結果。
「理想」と「摂取基準」は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書から。「現状」は2019年の国民健康・栄養調査の結果。
(注1)藻類のみ「プロスキー法」を用いて測定。
(注2)国際的な食品規格を策定する国際食品規格委員会(コーデックス委員会)の食物繊維の定義(ALINORM 09/32/26)。
(注3)fooddb.mext.go.jp

取材・文/小山千穂(チャンゴ・ジャパン)  イラスト/PIXTA