「GLP-1」というキーワードをご存じですか? GLP-1は腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促す役割が知られています。実は、それだけでなく全身の臓器で健康効果を発揮することが明らかになっています。特に注目されているのが、食欲を抑えたり体脂肪を減少させるなどの「やせホルモン」としての作用。知られざるGLP-1の働きを紹介します。

GLP-1が少ないと、食欲が抑えられず過食ぎみになる可能性も。食べ物が早く消化管を移動するので、食後の血糖値が上がりやすく脂肪がつきやすい。

GLP-1が多く出ると、食欲が抑えられるとともに、脂肪の分解や燃焼が進むため、太りにくい体に。
「GLP-1ダイエット」で注目のGLP-1とは?
小腸や大腸で分泌される天然の“やせホルモン”
SNSやネット上の情報などで「GLP−1(ジーエルピーワン)」という言葉を目にしたことがある人もいるのでは。GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)とは、主に小腸の下部から大腸の上部にかけての腸粘膜の中にあるL細胞から分泌されるホルモンのこと。インスリン分泌を調節する消化管ホルモン「インクレチン」の一種だ。
「GLP−1には様々な作用があるが、最も大きな役割の一つがこのインスリン分泌による血糖値のコントロール。食べ物が腸に入ると、糖やたんぱく質、脂質といった栄養素が刺激になってGLP−1が分泌される。それが膵臓に作用するとインスリンの分泌を促す」と横浜総合病院糖尿病センターの田中逸センター長は説明する。
ダイエットで注目を集めているのはそれとは別の、食欲を抑えたり、体脂肪を減少させる天然の“やせホルモン”としての作用だ。腸で分泌されたGLP−1は脳の食欲中枢に作用すると食欲を抑制する。胃腸ではぜん動運動や胃酸分泌を抑える作用もあり、消化に時間がかかるため食事の途中で満腹感が現れたり、食間にお腹がすきにくくなり、過食や間食を防げると考えられる。
さらにGLP−1は脂肪細胞での脂肪分解を促進し、褐色脂肪細胞では脂肪燃焼も促す。
「つまりGLP−1を多く出せる体にすれば、ガマンすることなく食事量が抑えられ、体脂肪を減らすことが期待できる」(田中センター長)というわけだ。