どんな食事が病気の予防になるの? また、どんな習慣がアンチエイジングにつながるの? 世界中で進む、“健康”にまつわる研究について、注目の最新結果をご紹介します。

座った姿勢から、こまめに立つだけでも食後の血糖値が下がる

 座ってばかりの生活は健康によくないといわれる。こまめに立ったり散歩などの軽いウオーキングで、食後の血糖値は下がることが、複数の論文をレビューしたアイルランドと英国の研究で明らかになった。

仕事の合間に、こまめに立ち上がるほうがよさそうだ
仕事の合間に、こまめに立ち上がるほうがよさそうだ

 食事をすると、血糖値は一時的に上昇するが、およそ2時間後には正常値に戻る。ところがインスリンの働きが悪いと、血糖値は高いままの状態(食後高血糖)になる。糖尿病の早期には、空腹時血糖値は正常でも、食後血糖値が高いことがある

 研究では、18歳以上の成人において長時間の座位と断続的な短時間の立位や軽い強度の歩行を比較した無作為化クロスオーバー試験*が検索された。その結果、太り過ぎ(BMI25.0-29.9)、または肥満(30.0以上)の男女を対象とした7件の研究(英国5件、米国2件)が条件を満たした。それらの研究では、20分ごとに2分の立位、30分ごとに5分の立位、あるいはトレッドミルを使って時速1.5〜4kmの速さで歩く、廊下を歩くなどの介入が行われた。なお日常生活での歩行は時速4km前後といわれる。

*無作為化クロスオーバー試験とは、対象者を無作為(ランダム)に複数の介入グループに分け、1人の人が時期を変えて、すべての介入を行うこと。

 7件の試験を統合して解析した結果、座り続けた場合に比べて、座位を中断して立つことで食後血糖値は統計学的に有意に減少し、平均で9.51%低下した。インスリン濃度も立位でやや改善したが、統計的に有意ではなかった。一方、軽い強度のウオーキングは、座り続けた場合と比較して、食後血糖値は明らかに改善し、平均17.01%低下した。インスリン濃度も有意に低下した。また軽い強度のウオーキングは、立位と比較して、血糖値は有意だがわずかに低下し、インスリン濃度も低下した。しかし収縮期血圧(上の血圧)には立位も軽強度のウオーキングも影響しなかった。

 このため、立位と軽い強度のウオーキングは、長時間の座位と比べて、食後の糖代謝を改善すると結論づけられた。

 ただし、長時間の座位をやめることで太り過ぎの人は肥満の人よりも食後血糖値は改善したが、肥満の人では座位をやめるだけではカバーできないほど、代謝が損なわれている可能性があると研究者らはいっている。

 今後、日常生活や職場環境において、座りっぱなしではなく、軽い強度のウオーキングなどをして、長期的な健康への影響を調べるべきであるとしている。

データ:Sports Medicine 2022;52:1765-1787.

文/八倉巻尚子 写真/PIXTA