どんな食事が病気の予防になるの? また、どんな習慣がアンチエイジングにつながるの? 世界中で進む、“健康”にまつわる研究について、注目の最新結果をご紹介します。

 今回は、人体の不思議さを感じさせる最新の研究を紹介する。「魅力的な物語を聴いているとき、心拍数は同期する」「人の声があると、食事がおいしく感じる」という2つの研究だ。

魅力的な物語を集中して聴いているとき、心拍数は同期する

 心拍は自律神経で調整され、一定のリズムで繰り返される。だが、運動したり緊張したときには心拍数は増加する。最近の研究で、物語を集中して聴いたり観たりしていると、心拍数は同じ箇所でほかの人と同期していることがわかった。

心拍数は同期する?
心拍数は同期する?

 これまでの研究でも、同じ映画を観ているとき、参加した人たちは同じような脳の動きをすることが報告されている。今回の研究は、物語を聴く、観るときの意識に着目して、4つの実験が行われた。

 1つ目の実験は、参加者にイギリス人男性の声で朗読したジュール・ヴェルヌの『海底二万里』を1分間ずつに区切って、計16分間聴いてもらい、そのときの心電図を記録した。

 2つ目の実験では、生物学や物理学、コンピュータサイエンスに関する3~5分の教育用ビデオを参加者は5本視聴し、その後でビデオの内容について10~12個の質問に答えるように指示された。さらにその後、もう一度同じビデオを観てもらい、同時に800から1000までの数字を7つおきに逆算してもらった。

 この2つの実験で、聴覚や視覚への刺激に対して、参加者間で心拍数の同期が認められた。実験1では参加者27人中17人で有意に心拍数は相関した。つまり、同じ部分で心拍数が増加したというわけだ。しかし逆算の作業をしながらビデオを観ると、注意力が下がり、その相関は下がることもわかった。

 さらに、実験3では、参加者に4つの童話を聴いてもらい、主人公の名前など童話の内容を思い出す課題に答えてもらうことにした。それには、注意深く聴く場合と、合図に合わせて100から逆算する場合に分けられた。

 結果、注意深く聴いた場合は心拍数の相関は高いが、逆算をして注意力が低下すると、心拍数の相関は低くなった。また童話の内容を思い出す課題の成績が良くなるほど、参加者同士の心拍数の相関は高かった。

 このことから、心拍数の相関は、物語を意識的に処理している証拠だと研究者らは言う。この実験では呼吸も測定したが、心拍数の相関とは関連性がなかった。

 次に、意識障害のある患者でも同じ実験を行った。10分間の童話を聴いてもらったところ、健常者との心拍数の相関は低かった。ところが意識の回復度と心拍数の相関とは関連性があったという。研究者らは心拍数の相関は認知状態のマーカーになる可能性があるとしている。

 また魅力的な物語ほど、聴き手の注意を向け、集中力を高めることが予想される。心拍数の同期は、物語がどれだけ魅力的かを示す良い指標となるだろうと研究者らは言っている。

データ:Cell Reports (2021) 36,11:109692