お通じは「出ればいい」わけではなく「どんな出方で、どんな形状か」が大切なことがわかってきました。また、年齢とともに、「便秘になりやすい腸」へと変化が起きるそう。今回は、その理由と、重要な排便時のスタイルについて紹介します。

・ここまでわかった「便秘」 出ればいいわけではない【1】←今回はココ
・便秘の人は便意を消失しやすく、便成分に特徴があった【2】

排便機能が低下し、年とともに増える便秘

 「便秘は単なる“症状”ではなく、しっかり治療する必要がある疾患。排便の状態は、私たちが意識するよりもはるかに心身の健康に影響をもたらしている」と、便秘に詳しい横浜市立大学大学院医学研究科の中島淳教授は言う。現時点では便秘に悩んでいなくても、年齢とともに排便の機能は低下し「すっきり出にくくなる」ようだ。若い年代では女性に多く見られる便秘も、70歳以降は男女共通の悩みとなる(下グラフ)。

高齢になるほど便秘に悩む人が増える
高齢になるほど便秘に悩む人が増える
便秘の自覚症状を訴える有訴者率は若年数では女性に多いが、70歳以降になると男女ともに増え、男女比がほぼ1:1となる。(データ:平成28年国民生活基礎調査)

 また、出にくい便をいきんで押しだそうとするとき、高齢者では排便から30分後まで血圧が上昇した状態が続く(下グラフ)。

高齢になると排便30分後まで血圧が上昇
高齢になると排便30分後まで血圧が上昇
入院中の患者と外来通院患者から76〜98歳の22人、比較対照群として19〜26歳の若く健康な人10人を対象に、4ヵ月間、30分間隔で24時間血圧を測定。高齢者では排便時のいきみで血圧が上昇し、30分後まで上昇が続いた。(データ:自律神経 2000; 37(3): 431-439)

 血圧上昇は血管の病気にも影響。排便回数が少なくなるほど心血管疾患(心筋梗塞や狭心症)、脳卒中(脳梗塞や脳出血)による死亡リスクが高くなることも国内の研究で明らかになっている。40〜79歳の男女4万5112人を対象に13.3年追跡した大崎コホート研究で、排便回数が1日1回以上の群と比べて2〜3日に1回、4日に1回以下の群は心血管疾患、脳卒中による死亡リスクがいずれも高くなっていたという。